糖原病II型
a.乳児型(infantile acid maltase deficiency: Pompe disease)
生後数カ月以内に近位筋の筋力低下、筋緊張低下、心、舌、肝肥大をみます。呼吸不全、哺乳力低下がみられ、通常2歳までに呼吸不全、あるいは心不全で死の転帰をとります。
心電図では心肥大所見と、PR間隔の短縮が特徴的所見です。筋生検による組織化学的検査と、酸マルターゼ酵素活性の測定で診断が確定します。
病理学的には神経細胞、骨格筋、心、肝、平滑筋細胞内に著明なグリコーゲンの蓄積をみます。筋生検ではリソゾームが増加し、酸フォスファターゼ活性は著明に上昇している(組織化学的に証明できます)ことが診断に役立っています。
b.小児型(childhood acid maltase deficiency)
乳児期あるいは小児期に筋力低下で気付かれます。近位筋の筋力低下が主症状で、心、肝肥大はありません。血清クレアチンキナーゼ(CK)値も軽度ですが高いので、多くの患者さんは肢帯型筋ジストロフィーの臨床診断をうけます。四肢の筋力低下はゆっくりと進行します。本症では特に呼吸筋が侵されやすいので、呼吸機能に関する注意が必要です。呼吸機能が低下した人には人工呼吸器を使用します。
筋生検では乳児型より軽症ですが、同じ所見をみます。
c.成人型(adult-onset acid maltase deficiency)
20歳以降に発症し、進行性の筋力低下をみます。臨床的には肢帯型筋ジストロフィーと同じで、心、肝肥大はありません。呼吸筋が侵され易いこと、頸屈筋の筋力低下が目立つこと、筋電図で偽ミオトニー現象をみることが本症の特徴とされています。
治療:今のところ抜本的な治療法はありません。ただし、酵素補充療法が実現化しそうですし、遺伝子治療の研究も進んでいます。
ポンペ病
(糖原病IⅠ型 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/08 14:40 UTC 版)
ポンペ病(ぽんぺびょう、Pompe Disease)は、糖原病の1つ(II型)であり、細胞内酵素であるα1,4グリコシダーゼの欠損によりあらゆる細胞のライソゾームにグリコーゲンが蓄積する病態である[1]。常染色体劣性遺伝形式をとる[2]。ライソゾームに関連した酵素が欠損しているために、分解されるべき物質が老廃物として体内に蓄積してしまう先天代謝異常疾患の総称である「ライソゾーム病」として特定疾患に2001年に指定された。糖原病や酸性マルターゼ欠損症(AMD)とも呼ばれる[3]。オランダの病理学者・ヨアネス・カッシアヌス・ポンペが1932年に初めて報告した[3]。
- ^ a b c ポンペ病 国立成育医療研究センター
- ^ a b c d e f 厚生労働省難治性疾患克服事業ライソゾーム病に関する調査研究班
- ^ a b c d e 日本ポンペ病研究会「診断治療ガイドライン」
- ^ a b c d 日経メディカルオンライン「マイオザイム:糖原病II型の特効薬」
- ^ 難病情報センター
- ^ a b c 日本小児神経学会
- ^ “「ポンペ病」に光を映画機に関係者期待”. 47NEWS. (2010年7月20日) 2012年2月16日閲覧。
- ^ “重症複合免疫不全症とポンぺ病の新生児マススクリーニングを愛知県内で開始について~早期診断による救命率の向上に期待~”. 名古屋大学医学部付属病院公式サイト. 名古屋大学医学部付属病院 (2017年4月1日). 2022年5月6日閲覧。
- ^ “ポンペ病に対する新たな治療薬が登場”. 日経メディカル. 日本経済新聞社 (2021年11月25日). 2022年10月29日閲覧。
- ^ a b c サノフィ公式>「サノフィジェンザイム、開発中の第2世代ポンペ病治療薬の第I/II相試験結果を発表 - 主要な第III相試験の2016年第2四半期開始に向けた試験結果-」
- ^ “[https://www.sanofi.co.jp/-/media/Project/One-Sanofi-Web/Websites/Asia-Pacific/Sanofi-JP/Home/press-releases/PDF/2016/201611142.pdf?la=ja サノフィジェンザイム、開発中の第2世代ポンペ病治療薬 NeoGAAのピボタル第III相試験を開始]”. サノフィ株式会社 (2016年11月4日). 2020年9月21日閲覧。
- ^ a b c “[https://www.sanofi.co.jp/-/media/Project/One-Sanofi-Web/Websites/Asia-Pacific/Sanofi-JP/Home/press-releases/PDF/2020/200625.pdf?la=ja サノフィが遅発型ポンペ病の治療薬として 開発中の酵素補充療法剤により、臨床上意義ある症状改善を達成]”. サノフィ株式会社 (2020年6月25日). 2020年9月21日閲覧。
- ^ “[https://www.sanofi.co.jp/-/media/Project/One-Sanofi-Web/Websites/Asia-Pacific/Sanofi-JP/Home/press-releases/PDF/2021/210119.pdf?la=ja ポンペ病の酵素補充療法で 新たな標準治療となる可能性のあるavalglucosidase alfa 日本での承認申請のお知らせ]”. サノフィ株式会社 (2021年1月19日). 2021年5月24日閲覧。
- ^ 日経バイオテクONLINE (2021年1月19日). “サノフィ、ポンペ病の酵素補充療法で新たな標準治療となる可能性のあるavalglucosidase alfa日本での承認申請のお知らせ”. 日経バイオテクONLINE. 日本経済新聞社. 2021年5月24日閲覧。
- ^ 「ポンペ病に対する新たな治療薬が登場」『日本経済新聞』、2021年11月26日。
固有名詞の分類
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