第11番 嬰ヘ短調 作品104-1
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「夜想曲 (フォーレ)」の記事における「第11番 嬰ヘ短調 作品104-1」の解説
1913年の春に作曲。同年デュラン社から出版された。初演は1913年12月10日、舟歌第10番、同第11番とともに国民音楽協会の演奏会でアルフレード・カゼッラの独奏による。急逝したノエミ・ラロの思い出に捧げられた。 ノエミ・ラロは、「ル・タン」紙の音楽批評家でフォーレの支持者だったピエール・ラロ(1866年 - 1943年)の夫人で、ピエールは作曲家エドゥアール・ラロの息子である。ノエミはまた、1880年代のパリで音楽サロンを催していたアンリエット・フックス(エドモン・フックス夫人)の娘であり、アンリエットは『夢のあとで』、『ネル』、『秋』などのフォーレの歌曲を初演し、フォーレと親しかった。 ともにデュラン社から出版され、同じ作品番号を持つ舟歌第10番(作品104-2)と一対をなす作品であり、冒頭からきわめて美しい葬送の音楽が繰り広げられ、作曲家自身の持つ慎み深さが、よりいっそう聞き手の心を震撼させる。この夜想曲について、フォーレの次男フィリップは「純粋にエレジー風のもの」と述べている。歌曲集『イヴの歌』の終曲「死よ、星くずよ」、悲歌劇『プロメテ』第2幕のパンドールの葬礼の場面、『ペレアスとメリザンド』の「メリザンドの死」、歌曲集『閉ざされた庭』などと並んで、フォーレの一連の「姿を変えたレクイエム」と見なされる。 曲はほぼ四声体で書かれており、多数の不協和音が豊かな表現力を生み出している。属音上に葬儀を思わせる簡潔な主題がゆっくりと現れ、全曲を支配する。第2主題もそれまでの部分に対して少しも対照的な効果を生み出さない。コーダに至って、短2度音程を含んだ和音の連打が転調を繰り返しつつ現れるが、これは夜想曲第13番、歌曲集『幻影』、同『幻想の水平線』、ピアノ三重奏曲など、フォーレ最晩年の境地を示す一連の作品に通じる書法である。
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