第三者と善意・無過失・対抗要件
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/01 03:45 UTC 版)
「虚偽表示」の記事における「第三者と善意・無過失・対抗要件」の解説
第三者の善意94条2項の「第三者」は善意でなければならない(94条2項参照)。「善意」とは虚偽表示であるという事実を知らないことをいい、悪意の第三者に対しては当事者は無効を対抗しうる。善意・悪意は第三者がその地位を取得した時すなわち取引時を基準として判断する(通説・判例。大判大5・11・17民録22輯2089頁、最判昭55・9・11民集34巻5号683頁)。第三者が善意の立証責任を負うが(通説・判例。最判昭35・2・2民集14巻1号36頁、最判昭41・12・22民集20巻10号2168頁)、多くの場合には事実上の推定を受けるものと考えられている。 第三者の無過失の要否第三者の無過失の要否については学説に対立がある。 無過失不要説通説や判例は、同項の適用を受ける第三者は、条文の文言どおり、虚偽の意思表示について「善意」であればよいとする。虚偽表示を行った者は虚偽の外観の作出への帰責性が強いことを理由とする。 善意無重過失説第三者は善意であれば軽過失があってもよいが、無重過失であることを要するとする。 無過失必要説第三者には善意のみならず無過失まで要する。 第三者の対抗要件の要否虚偽表示においては登記の具備についても問題となる。 表意者と第三者通説・判例は表意者と第三者の関係は前主・後主の関係であり、対抗関係にないので第三者が対抗要件を備えることは不要であるとしている(最判昭44・5・27民集23巻6号998頁)。これに対して第三者が保護されるには対抗要件として登記が必要であるとする説あるいは資格保護要件として登記を要するとみる説もある。 第三者相互間甲が乙と不動産譲渡の虚偽表示(仮装譲渡)をし、善意の第三者である丙が乙からこの不動産を譲受けた後に、甲が他の第三者である丁に不動産を譲渡した場合には、丙と丁は対抗関係に立ち、丙が丁に対して不動産取得を主張するには不動産の取得登記を要するとする(通説・判例。最判昭42・10・31民集21巻8号2232頁)。ただし、善意者保護の観点から対抗関係を否定して登記は不要とみる学説もある。
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