社員の個性の重視
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/10 10:15 UTC 版)
合名会社は、社員が無限責任を負っているから、会社自体の財産もさることながら、会社に結集した社員個々人の資産状況が、会社の信用の大きさにつながる。また、社員は会社の財産的裏付けであると同時に経営陣でもあるから、その手腕・技能・知識・経歴や人脈・人望が経営の成否を左右する。合名会社は、このように社員に属する特性(資本の人的な構成)、そして社員間の協調に信用や経営の基礎を置く人的会社である。 こうした性質から、社員が交替したり新たな社員が加入することは、社員相互の関係や信用、経営を悪化させる危険性を伴う。そのため、他の社員に歓迎されない者が社員となる可能性を極力排除している。 まず、株式会社の株式のように持分を自由に譲渡することはできず、譲渡するには全社員の承諾(同意)が必要である(585条1項)。また、社員が死亡した場合にも社員としての地位が相続されることはなく(法定退社、607条1項3号)、相続人には持分の払戻が行われる。 しかし、持分の譲渡を制限すれば、そのぶん投下資本の回収が困難になる。そこで、株式会社では許されていない退社制度を認め、会社から出資の払戻を受けることができるとしている。合名会社の場合、たとえ払戻によって会社財産が減少しても社員の個人資産を会社債務の引き当てにできることから、こうした仕組みをとっている。有限責任原理によって、会社の債務の引き当てが会社財産のみである株式会社では会社財産が減少すると会社債権者を害することになるから、退社(出資の払戻)は認められていない。 他に、強制的に社員を退社させたり(609条)、業務権限を剥奪することもできる。
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