白色矮星と大質量星との合体によるIa型超新星爆発
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/04/12 00:11 UTC 版)
「SN 2006gy」の記事における「白色矮星と大質量星との合体によるIa型超新星爆発」の解説
2009年に川端弘治を中心としたグループは、超新星爆発が観測されてから200日後から400日後にかけてハワイ・マウナケアのすばる望遠鏡の微光天体分光撮像装置 (Faint Object Camera and Spectrograph, FOCAS) で観測したSN 2006gyの後期スペクトルのデータを発表した。このスペクトルは、既知のどの超新星爆発とも異なっており、特に「元素に起因する放射輝線の幅が狭いこと」、「8000-8500Åの辺りに未知の放射が存在すること」という点で、当時の理論予測と一致しないものであった。前者は超新星爆発の放出物質の膨張速度が通常の超新星爆発の10~15%しかないこと、後者は放出物質の性質に既知の超新星爆発と大きく異なる点があることを示していた。 川端らのグループはこの後期スペクトルの理論再解析を行い、未知の放射が中性の鉄元素によるものである可能性を見出した。理論解析から、太陽質量の0.3倍以上の鉄が放出されていれば未同定の放射輝線の波長や強度が説明できることが示され、十分な量の鉄元素を放出できるIa型超新星爆発である可能性が示唆された。超新星爆発では放出物質が高速膨張することで密度が低くなるため鉄元素はほとんどイオン化されてしまうが、SN 2006gyでは放出物質の速度が低く、密度が通常の超新星爆発より300倍ほど高くなるため、中性の鉄元素が存在できる。さらに、Ia型超新星の放出物質が大量の星周物質に向かって衝突しながら膨張した場合の挙動と光度曲線を理論計算したところ、SN 2006gyの後期スペクトルの性質や光度、光度の進化と一致することが示された。この研究結果から川端らの研究グループは、SN 2006gyはこれまで提唱されてきた大質量星の超新星爆発ではなく、白色矮星と大質量星の連星の合体によるIa型超新星爆発であるとすれば観測結果を矛盾なく説明できる、としている。
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