発症と経過
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/02 23:55 UTC 版)
多くの神経変性疾患は発症日を同定することが困難である。潜在的に発症して、長い時間をかけて正常神経系機能を保った後、緩徐進行性に進行するという経過をたどる。しばしば、患者や家族は外傷や感染、外科的処置など記憶に残る出来事に付随して機能障害や症状が突然出現したと話すことがある。丁寧に病歴を聴取するとわずかな症状がその前から出現していることが判明する。症状発症前の明確な臨床マーカーがないため、疾患発症を確実に捉えることは困難であり、前臨床期の期間は神経変性過程の進行速度に依存していて、数ヶ月から数年の幅があるものと考えられている。 神経変性疾患において急激な症状の悪化が時に観察されることがある。神経変性過程の急激な悪化の可能性は排除できないが、多くは感染症などの身体疾患が症状に影響している場合が多いと考えられている。神経変性の進行速度は自然経過中においては概して一様である。しかし、神経細胞の残存の程度と臨床症状の程度の関係性は直線的な関係ではない。多くの神経細胞が脱落したとしてもある一定期間は臨床症状の増悪はないが、機能的な閾値を下回るほどの神経細胞脱落をきたしたときに、症状は進行・悪化すると考えられている。すべての神経変性疾患の進行は緩徐であり、数年を経て終末期に至るという経過をたどる。神経変性が緩徐に進行する理由は完全には解明されていないがすべての神経細胞が一様に機能低下し、緩徐に細胞死に向かって進行しているわけではない。病期経過中、どの時期においてもわずかな数の神経細胞が比較的急速な神経細胞死を起こして脱落し続けていくため、臨床症状や画像検査などで臨床評価された機能は緩徐に進行していると考えられている。
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