発生、創傷治癒における上皮間葉転換
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/05 01:16 UTC 版)
「上皮間葉転換」の記事における「発生、創傷治癒における上皮間葉転換」の解説
胚形成における最初の段階の後、胚の着床と胎盤形成に上皮間葉転換は関わっている。栄養外胚葉細胞(英語版)は適切な胎盤の配置および子宮内膜への浸潤を容易にするために上皮間葉転換を行う。これにより、胚への栄養とガス交換が可能となる。胚形成後の原腸陥入において、上皮間葉転換は、細胞が胚の特定の部位(有羊膜類における原始線条やショウジョウバエにおける腹面溝(英語版)など)へと移動することを可能とする。これらの組織における細胞はEカドヘリンを発現し、細胞極性を持っている。原腸陥入は急速な過程であるため、EカドヘリンはTwistとSnailによって転写レベルで抑制され、p38関連タンパク質にてタンパク質レベルで抑制されている。原始線条は陥入により内中胚葉を形成し、再び上皮間葉転換を起こして内胚葉と中胚葉に分離する。原始線条由来の間葉系細胞はまた、間葉上皮転換によって(体節と同じような)脊索などの多くの上皮系の中胚葉由来器官の形成に関与している。ナメクジウオは上皮神経管と背側体節を形成するが、原始線条の上皮間葉転換能は有していない。高等脊椎動物において、原始線条外に由来している間葉は体節から前方へと移動するとともに、神経管間葉を伴い心原性中胚葉の形成に寄与する。 脊椎動物において、上皮細胞と間葉細胞は基本的な組織の表現形質である。胚発生において移動可能な神経堤細胞は神経外胚葉の上皮細胞を含む上皮間葉転換によって形成される。結果としてこれらの細胞は神経ヒダ(英語版)から分離し移動能を獲得することで、胚の様々な部位に広がっていき、多くの他の細胞へと分化していく。また、頭部や顔面を形成する結合組織を形作る頭蓋顔面堤系間葉細胞は上皮間葉転換による神経管上皮によって形成される。細胞外マトリックス外における脊椎形成において上皮間葉転換が起きる。これは、神経管を取り囲む線維芽細胞や骨芽細胞によりなされる。これら細胞の大部分の由来は原条と同様、硬節や体節の間葉細胞である。間葉細胞の形態は胚のなかの特定の標的へと移動することを可能とし、それらの細胞は移動先で他の細胞へと分化、変形または(さらに)それらを誘導する。 創傷治癒においては、傷が閉じていく際に、創傷部付近のケラチノサイトが上皮間葉転換、上皮化や間葉上皮転換を引き起こす。移動先端のSnail2の発現は、このような状況に影響を与え、その過剰発現は創傷治癒を促進する。同様に、各月経周期において、卵巣表面の上皮細胞は排卵後の創傷治癒期間において上皮間葉転換を起こしている。
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