疲労亀裂の発見確率
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 03:58 UTC 版)
「日本航空123便墜落事故」の記事における「疲労亀裂の発見確率」の解説
しりもち事故の修理ミスによる圧力隔壁の疲労亀裂破壊が事故原因であることが明らかとなったが、事故機は修理後「C整備」を7度受けていた。C整備には後部胴体内から圧力隔壁を目視点検する項目が含まれており、事故の直近では1984年(昭和59年)11月20日から12月5日まで行われていた。そこで、整備員がどの程度の確率で疲労亀裂を発見出来るかを算出した。 ボーイング747の整備方式は「コンディション・モニタリング方式」と呼ばれるもので、運行されている同一機種の故障データを監視しながら対策をとるものであった。この整備方式を設計面での土台となったものが、「フェイルセーフ設計」であり、不具合が発生しても多重防護により他の部分に不具合が及ばない設計がなされていた。圧力隔壁も複数の区画で破壊が及ばないように設計されていたが、本事故は「マルチサイトクラック」と呼ばれる複数の区画で破壊が起こっており、設計思想にも及ぶ重大な問題となっていた。 亀裂の発見確率こそ整備方式を決める前提となるものであるが、ボーイング747のどの機種も単一の亀裂しか想定しておらず、マルチサイトクラックを想定していなかった。そこで事故調査では単一亀裂の発見確率から、マルチサイトクラックの発見確率を導くこととした。 目視点検による一つの疲労亀裂の発見確率 P I {\displaystyle P_{\mathrm {I} }} は、次の式による三母数ワイブル分布関数で算出された。 .mw-parser-output .templatequote{overflow:hidden;margin:1em 0;padding:0 40px}.mw-parser-output .templatequote .templatequotecite{line-height:1.5em;text-align:left;padding-left:1.6em;margin-top:0} P I = 1 − exp { − ( a − γ β − γ ) α } {\displaystyle P_{\mathrm {I} }=1-\exp \left\{-\left({\frac {\,a-\gamma \,}{\beta -\gamma }}\,\right)^{\alpha }\right\}} a {\displaystyle a} : 可視亀裂長さ γ {\displaystyle \gamma } : 最小発見可能亀裂長さ α {\displaystyle \alpha } , β {\displaystyle \beta } : 係数 一番激しかった亀裂は三か所でリベット孔を繋ぐまで進行していたと推定され、その長さは1センチメートル程度、発見確率は米空軍の技術資料などから10パーセントと計算された。 また、多数の疲労亀裂のうちの一つを発見する確率 P T {\displaystyle P_{\mathrm {T} }} は、次の式により算出された。 P T = 1 − Π ( 1 − P I ) {\displaystyle P_{\mathrm {T} }=1-\Pi (1-P_{\mathrm {I} })} Π {\displaystyle \Pi } : 多くの ( 1 − P I ) {\displaystyle (1-P_{\mathrm {I} })} の乗算 計算の結果、亀裂の発見確率は「14~60パーセント」と幅の大きい玉虫色の結論となった。ただ、この研究により目視点検で亀裂を発見するデータが無いことが判明し、建議で「目視点検による亀裂の発見に関し検討すること」を示した。
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