産卵場所の解明
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 08:21 UTC 版)
長らく正確な産卵場所は不明で、フィリピン東方海域とされていた時期もあるが、外洋域の深海ということもあり、長年にわたる謎であった。しかし、2006年2月、魚類学者の塚本勝巳らの研究チームが、ニホンウナギの産卵場所がグアム島やマリアナ諸島の西側沖のマリアナ海嶺のスルガ海山付近であることを突き止めた。 これは、孵化後2日目の仔魚を多数採集することに成功し、その遺伝子を調べた結果、ニホンウナギであることを確認したものであるこれにより、「冬に産卵する」というかつての仮説は否定された。 2008年6月および8月には、水深が2,000m以上もある西マリアナ海嶺南部海域で、水産庁と水産総合研究センターによる調査チームが、成熟したニホンウナギおよびオオウナギの捕獲に、世界で初めて成功した。トロールの曳網水深は200-300mであった。雄には成熟した精巣が、雌には産卵後と推定される収縮した卵巣が認められた。また、水深100-150 mの範囲で、孵化後2-3日経過したと思われる仔魚(プレレプトケファルス)26匹も採集された。さらに、プレレプトケファルスが生息する層の水温が、26.5-28℃であることを初めて確認した。 同チームは2009年の調査において、さらに南方の海域で8個体(雌4、雄4)のニホンウナギと2個体(雌1、雄1)のオオウナギを捕獲した。トロールの曳網水深は150-300mであり、周辺には海山のような浅場はなかった。これの結果から、海山上に生息しているわけではなく、中層を遊泳しながら産卵をしていると考えられる。 この推定を基に、塚本らの研究チームが周辺海域をさらに調査したところ、2009年5月22日未明、マリアナ海嶺の南端近くの水深約160メートル、水温が約26℃の海域で、直径約1.6 mmの受精卵とみられるものを発見。遺伝子解析の結果、天然卵31個を確認した。天然卵の採集は世界初であると同時に、水深約200 mで産卵され、約30時間かけてこの深さまで上がりながら孵化することも判明した。 さらに同チームでは、2011年6月29日に学術研究船白鳳丸に搭載したプランクトンネットを用いて、産卵直後から2日程度経過した147個の受精卵の採取に成功した。新月の2-4日程度前の日没から23時の間、水深150-180 mで産卵されたと推定される。
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