生成文法と形態音韻論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/04/10 04:12 UTC 版)
生成文法で形態音韻論は大きく変化した。ノーム・チョムスキーの初期のモデルにおいて、形態音韻規則は形態素の記号列を音素列に書きかえるための規則とされた。しかしモリス・ハレは文法を排除した音素(自律的音素)の観念を不要とし、チョムスキーの形態音韻規則を単に音韻規則と呼んだ。 チョムスキーとハレによる1968年の『英語の音型』(The Sound Pattern of English) は生成音韻論の代表的な著書だが、ここでも形態音韻論と音韻論の区別はなされず、音韻規則が抽象的な音韻的表現を具体的な音声的表現に変換すると考えられている。 『英語の音型』の音韻規則は非常に強力であり、通常は通時論的な変化と考えられている大母音推移なども音韻規則に含められている。また、英語の伝統的な正書法は語彙を理想に近く表現しているとも主張した。たとえば英語の resign, paradigm の黙字の g は音韻的表現のレベルでは存在し、resignation や paradigmatic ではそれが音声的にも出現すると考えた。このような音韻的表現の存在には疑問が提出されており、たとえばチョムスキー夫人であるキャロル・チョムスキーの論文によれば、7年生(日本でいう中学1年生)の生徒には sign と signature に語源的な関係があることが理解できなかったという。ジェフリー・サンプソンによると、英語の不規則な綴りの形態音韻論的な説明は却下され、英語の綴りが表語的な性格を持つということによって説明される。
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