球狀船首とは? わかりやすく解説

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きゅうじょう‐せんしゅ〔キウジヤウ‐〕【球状船首】

読み方:きゅうじょうせんしゅ

船首の水面下となる部分に、球状の膨らみを前方へ突出させたもの。これによってできる波が船体のつくる波と干渉し、造波抵抗を減少させる。高速船のほかタンカーなどにも採用されている。球状艦首。船首バルブ。バルバスバウ。


バルバス・バウ

(球狀船首 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/08/28 17:46 UTC 版)

バルバス・バウの効果
1.バルバス・バウ
2.従来の船首
3.バルバス・バウだけが作る波
4.水面の船首が作る波
5.合成された波
左図で示す2つの形状が生み出す波は山と谷が互いに打ち消しあって、右図のようにほとんど波が消える。

バルバス・バウ(英語: Bulbous Bow)とは、船の造波抵抗を打ち消すために、喫水線下の船首に設けた球状の突起[1]。球状船首(きゅうじょうせんしゅ)[1]、船首バルブ(せんしゅバルブ)[2]ともいう。「Bulbous」は「球根状の」、「Bow」は「船首」という意味である。

高速で一定の速度を維持しながら航行する必要がある大型客船・LNG運搬船・軍艦などを除き、脱炭素化と低速運航という時代の潮流でバルバス・バウは消えつある[3]。

歴史

バルバス・バウの大元となる起源は、古代ギリシアの軍艦ガレー船の舳先に取り付けられた衝角であった。[要出典] これらは主に海戦の際、相手軍艦の喫水線下船腹を突き破り沈没させるための兵器として使用され、現代のように造波抵抗の減衰を目的としたものではなかった。

1911年、アメリカ海軍の造船官であったデヴィッド・ワトソン・テイラー少将が考案、レキシントン級航空母艦に採用した。その後、ドイツ「客船ブレーメン」、フランス「客船ノルマンディー」など、主に速度と燃費の良さの両立が要求される大型の外洋船、特に客船主体に普及していった。

1960年に関西汽船の「くれない丸」が阪神・別府航路に就航後、1961年に当時実験途上であった乾バウのひかえめなプロトタイプが装備された僚船「むらさき丸」との併走実験が行われ、効果が実証された[4][5]。

働き

造波抵抗
船首では水面を掻き分けて進む時に波が生じる。この波は引き波と呼ばれ、引き波を生み出すためのエネルギー損失を船が推進する時の抵抗と見做せる。この抵抗が造波抵抗である。これを小さくすることは、航行速度を高め燃費を改善する重要な要素である。
原理
バルバス・バウは水面下で前方に突き出した構造をしている。これによって、水面で船首が波をつくるよりも前方にあらかじめ波を生じる。水面で船首が水を掻き分けて生じる波は、バルバス・バウによって生じた波とは逆位相となり、それぞれの山と谷が打ち消しあうことで波を小さくする。
結果として造波抵抗を最小化して燃費の低減や速度の向上を図ることができ、さまざまな船に有効である。
逆効果
船体がバルバス・バウの設計どおりの喫水であれば高い造波抵抗低減の効果が期待できるが、積荷の増減などで喫水高が大きく変わり、特に空荷で船体が浮かび過ぎていてバルバス・バウが水面上に出ている場合には、従来型船首と比べて逆効果となる。また、フルード数が0.5を越えるような船では効果はほとんどなくなる[6]。

旧日本海軍での採用例

旧日本海軍で最初にバルバス・バウを採用したのは翔鶴型航空母艦であり、更に大和型戦艦にも採用された。空母では翔鶴型の他、大鳳、信濃、隼鷹および飛鷹で採用された。巡洋艦では大淀および阿賀野型軽巡洋艦4隻に採用された。

軍艦のソナードーム

アメリカ海軍のミサイル巡洋艦「カウペンス」。横須賀海軍施設内の乾ドックにて

軍艦ではバルバス・バウの内部にソナードームを備えた艦艇が多数存在する。主に敵潜水艦の位置や動きを把握するために使用される軍用ソナーを配置する場所として、船首部水中にあって大きな球状のバルバス・バウはうってつけであるためである。

ソナードームの内部は、水中振動波(水中音波)の振動子と受信センサーが球状に多数取り付けられ、間隙は水などで満たされている。バルバス・バウの外面カバーは繊維強化プラスチックか合成ゴムによって内部を保護するとともにセンサーの感度を落とさないように配慮されている。

バルバスバウマーク

バルバス・バウを持っている船の船首にはバルバスバウマークを掲示し、船首付近を通過する船が乗り上げないよう注意を促している。[7]

事故・事件

2017年、伊豆半島沖でアメリカ海軍のイージス艦「フィッツジェラルド」の右舷にフィリピン船籍のコンテナ船が衝突した。イージス艦側はアメリカ兵7人が死亡し、一時は沈没の危機に瀕した。衝突の規模の割に被害が拡大した理由の一つとして、コンテナ船のバルバス・バウが衝角の役割を果たし、イージス艦の船底付近に大きなダメージを与えた可能性が挙げられている[8]

ギャラリー

出典

脚注

  1. 1 2 木原一. “船のこと もっと船を勉強してみよう” (PDF). 防衛省. 2014年3月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年3月8日閲覧。
  2. ↑ 宮田秀明 (2006年4月3日). “「大和」級戦艦を設計した戦前日本の底力”. 日経ビジネスオンライン. 2014年3月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年3月8日閲覧。
  3. ↑ 船の「丸い先端」が消えた!?――いったいなぜ? 低速運航が変えた大型船の常識とは - Merkmal、2026年8月閲覧
  4. ↑ 乾崇夫, 高幣哲夫、「高速客船くれない丸におけるWaveless Bulbの船首波打消しに関する研究 第1報-水槽試験」『造船協會論文集』 1961年 1961巻 110号 p.75-89, doi:10.2534/jjasnaoe1952.1961.110_75,
    重満通弥, 甲斐敬二、「高速客船くれない丸におけるWaveless Bulbの船首波打消しに関する研究 (第2報-実船試験)」『造船協會論文集』 1961年 1961巻 110号 p.91-104, doi:10.2534/jjasnaoe1952.1961.110_91,
    高幣哲夫, 乾崇夫、「高速客船くれない丸におけるWaveless Bulbの船首波打消しに関する研究 第3報-波形観測」『造船協會論文集』 1961年 1961巻 110号 p.105-118, doi:10.2534/jjasnaoe1952.1961.110_105
  5. ↑ 造船資料保存グループ「造船資料保存活動の報告」『海事博物館研究年報』第38巻、神戸大学大学院海事科学研究科、2010年3月、51-67頁、 doi:10.24546/81005608、 hdl:20.500.14094/81005608、 ISSN 1880-005X。
  6. ↑ 池田良穂著 『内航客船とカーフェリー』 成山堂書店 2008年7月18日 新訂初版発行 ISBN 9784425770724
  7. ↑ 池田良穂監修、2013、『史上最強カラー図解 プロが教える船のすべてがわかる本』、ナツメ社 p. p.94
  8. ↑ 共同通信社 (2017年6月20日). “イージス艦、船首下部突起で穴か”. 47NEWS. 2017年9月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年6月26日閲覧。

関連項目

  • 衝角 - バルバス・バウと似た場所にある軍艦の攻撃用の部位
  • 船
  • 船舶工学
  • 乾崇夫 - バルバス・バウの効果についての理論化を行った第一人者。
  • ロイヤルウイング - 1961年、当時の関西汽船「くれない丸」を使って商業船舶としてバルバス・バウの有効性を実証した。


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