父権制の成立と神話
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 06:09 UTC 版)
神話と墳墓のシンボルとの関係を調べたJ・J・バッハオーフェンは、20世紀以降に科学的見地から乱婚や母権制といった古代社会に対する見方を批判されることになるが、1861年の著作『母権制』にて神話は母権制社会が父権制へ変遷する過程で構築されたと論説した。その段階を、初期の乱婚制母系社会から一夫一妻制を経て大地母神・デーメーテール型の母権へと変わり、やがて古代ギリシア・ローマを典型とする父権優位型神話体系が成立したと述べた。これは根底に、母親は自ずと母親たりえるが、父親がアイデンティティを持つには説明が不可欠で、この説明のために神話が創られたとしている。 神話学者の松村一男によると、この背景が影響して神話の女神や女性に見られる性質には、男性側の観念を反映した要素がある。ひとつはギリシアのアルテミスやインドのドゥルガーのような豊穣がある。ただしそこには、単に恵みをもたらすのみならず、全てを呑み込むような過剰な部分も併せ持つ。他にも処女と母親という相反する性質の同居があり、日本のアマテラス、ギリシアのアテーナー、そしてキリスト教の聖母マリアらがこの例に当たる。これらは男性が女性に抱く理想を反映し、後に難解な理論づけをしたものという。
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