燕青のモデル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/28 15:54 UTC 版)
浪子燕青(第36位)は、童顔の美男子で鮮やかな入れ墨をしており、多芸多才。女性に対して潔癖であり、力持ちで武芸の腕も立ち、梁山泊一の暴れ者李逵をもおとなしくさせる器の持ち主でもあり、いくつもの側面を持った人気の高いキャラクターである。燕青がこのような複雑な人物造形となった背景には、様々な説話から成立した『水滸伝』の特徴が現れている。 元代の水滸戯に燕青は多く登場するが、この段階における燕青像には現在の『水滸伝』のキャラクターの片鱗も感じられない。水滸戯の一つ「燕青博魚」では約束を守れず梁山泊を追放され失明し、魚の賭け売りにも敗れる情けない大男という設定で、容貌も性格も全く異なっている。 『水滸伝』に描かれるような武芸の達人としての顔、たとえば第74回に燕青が奉納相撲で擎天柱任原を倒す段などは、『清平山堂話本』(嘉靖年間に刊行された小説集)に所収の「楊温攔路虎」(楊温が東岳廟の生辰祭で山東夜叉李貴を棒術で倒す話)から取り入れたものと思われる。一方で燕青の「浪子」な側面、すなわち多芸多才な遊び人という要素は、北宋代に実在した詞の名手である柳永(字は耆卿)を主人公とする戯曲や小説が元になっている形跡が見られる(『清平山堂話本』の中にも「柳耆卿詩酒玩江樓記」という話がある)。『清平山堂話本』の刊行時期は嘉靖20年代(1541年 - 1551年)が定説となっており、もしこれが『水滸伝』に採用されていたとすれば、『百川書志』に「忠義水滸伝一百巻」と記された1540年の段階ではまだ成立の途中であり、少なくとも第III部分(第72-82回)に関してはその後も容与堂本までの間に書き直された可能性が高いことになる。
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