火傷・病とは? わかりやすく解説

火傷病

 Erwinia amylovoraという細菌による病害であり、りんご、なし、マルメロなどの果樹や、サンザシコトネアスターナナカマドなどの花木類を侵す重要病害である。現在では、ヨーロッパのほぼ全域から西アジアへと分布広げているが、日本においては未発生である。火傷病に罹病した植物は、火にあぶられたような症状示し、それが病名由来となっている。病原細菌花器や付傷部から侵入して、花腐れ枯れ起こし、さらに主枝、幹へと広がり、胴枯れ枯死起こす高温多湿場合病勢著しく進み被害部に細菌粘液大量に溢出し、これが園地でのまん延伝染源となる。

火傷病

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/28 00:19 UTC 版)

Erwinia amylovora
分類
: 真正細菌
: プロテオバクテリア
: ガンマプロテオバクテリア
: エンテロバクター目
: 腸内細菌科
: エルウィニア属
: E. amylovora
学名
Erwinia amylovora
Erwinia amylovoraに感染したナシ
火傷病に感染し、焼け焦げたようになったリンゴの葉

火傷病かしょうびょう、fireblight または fire blight)は、リンゴナシマルメロなどの果樹、その他バラ科植物(サンザシコトネアスターナナカマドなどの花木)の猛威を振るう流行性の伝染病害である。アメリカ合衆国東部がその起源だと言われ、1シーズンで果樹園を全滅させることもあるため、欧米ではリンゴ、ナシを生産する農家にとっては深刻な関心事項となっている。これまでのところ、オーストラリアで発生したことはない。農林水産省は日本での発生を否定しているが、米国新聞ロサンゼルス・タイムズによると、1977年から北海道の梨の木に発見されたという[1]大韓民国では2015年5月に発生が報告された[2]

概要

真正細菌グラム陰性菌に分類されるErwinia amylovoraという細菌がその病原体となっている。ナシは最も感染性が高いものの、リンゴ、マルメロ、サンザシ、コトネアスター、ナナカマド、木イチゴなどなども感染による被害は大きい。北米東部の風土病だと言われているものの、現在はオーストラリアを除く世界中で発生するに至っている。

感染した植物は、黒変、萎縮、ひびわれなどが生じて火にあぶられたような症状となり、やがて枯死するため、日本語では火傷病と呼ばれ、英語では fire(火)、blight(枯れ)を並べた名称で呼ばれている。

主に春の開花期に細菌が開いた花、芽、葉から侵入して感染。細菌は、蜜蜂などの昆虫はもとより、鳥、雨、風によって広汎に運ばれる性質を持つ。細菌はまた、吸汁性の昆虫や葉食昆虫などによる芽、葉、花木につけられた刺し傷、切り傷から侵入することも多い。さらに嵐などの強い風雨により、数分で果樹園全体が感染してしまうこともあり、何らの徴候や症状も見られなかった果樹園全体に広がってしまう例も報告されている。

高温・多湿は病勢の拡大を早めるが、冬季の低温は細菌が休眠状態となり、感染が進むことは少ない。被害部に細菌粘液を大量に溢出し、これが園地でのまん延の伝染源となる。

日本ですでに発生している「ナシ枝枯細菌病」もErwinia amylovoraによるが、ナシ枝枯細菌病菌はリンゴに病原性を持たないと日本政府が主張し、「各種火傷病菌と違いがある」ということを告発する[3]。しかし、ナシ枝枯細菌病の病原細菌はErwinia amylovoraのbiovar4とする提案がなされている[4][5]。 また、同種の菌による病害が発生していることで問題となり、枝枯細菌病について報告した研究者が農水省に何度も呼ばれ尋問されるなど厳しい扱いを受け、自らの命を絶ったことは悲しい出来事であった。

脚注

  1. ^ (英語) LESLIE HELM and GALE EISENSTODT (1996年7月22日). “Caught in Cross-Fire of Pacific Apple War”. ロサンゼルス・タイムズ. http://articles.latimes.com/1996-07-22/news/mn-26755_1_fire-blight 2015年6月19日閲覧。 
  2. ^ “日豪が韓国産ナシの輸入を禁止、火傷病が発生・・韓国ネットは「今度は木?」「総体的難局。災難の総出動」”. Focus-Asia. (2015年6月18日). http://www.focus-asia.com/socioeconomy/photonews/421130/ 2015年6月19日閲覧。 
  3. ^ http://articles.latimes.com/1996-07-22/news/mn-26755_1_fire-blight
  4. ^ Akifumi Mizuno, Shigeyoshi Sato, Akira Kawai, Koushi Nishiyama (2000). “Taxonomic Position of the Causal Pathogen of Bacterial Shoot Blight of Pear”. Journal of General Plant Pathology (シュプリンガー・サイエンス・アンド・ビジネス・メディア) 66 (1): 48-58. http://link.springer.com/article/10.1007%2FPL00012920. 
  5. ^ 水野明文、曾澤雅夫、佐藤成良、早瀬猛、川合昭、西山幸司「(173) ナシ枝枯細菌病菌とErwinia amylovoraの比較 (日本植物病理大会)」『Annals of the Phytopathological Society of Japan』第62巻第3号、日本植物病理学会、1996年6月25日、303-304頁、NAID 110002734018 

関連文献

  • Joel L. Vanneste (Ruakura Research Centre, New Zealand), Fire Blight: The Disease and Its Causative Agent, Erwinia Amylovora, CABI Publishing, Aug 2000, ISBN 0851992943, [1](英語)
  • Clay S. Griffith, Fire Blight: The Foundation of Phytobacteriology, American Phytopathological Society, Jul 2003, ISBN 0890543097(英語)

関連項目

外部リンク


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