準経験論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/15 14:19 UTC 版)
同様の事柄のうち、実際には既存の学派に直接反対しているわけではないが、既存学派が焦点にしている考え方に疑義を唱えているのが、数学における準経験論の観念である。この観念は、数学の基礎付けが存在するという証明は決してできないであろうという20世紀後半に次第に一般的になっていた確信から生まれた。これは数学におけるポストモダニズムと呼ばれることもあるが、この用語は論者によって濫用されていたり中傷の的になっていることは否めない。準経験論によれば、数学者は研究を行う際に、定理の証明だけではなく仮説の検証も行っている。数学的論証は、前提から結論に至る真理を伝えることもできるし、結論から前提に至る虚偽を伝えることもある。イムレ・ラカトシュはカール・ポパーの科学哲学に示唆を受けて、準経験論を発展させた。 イムレ・ラカトシュの数学の哲学は、一種の社会構築主義と見られることもあるが、本人はそれを意図していたわけではなかった。 こうした方法はつねにフォーク数学の一部であった。フォーク数学によって偉大な計算・測定の作業が行われることがある。実際、文化によっては証明とはこうした方法のことである場合もある。 かつてヒラリー・パトナムは、数学的実在論の立場にたつなら、どんな理論でも準経験論的方法を含まざるをえないと述べたことがある。パトナムによれば、はじめて数学をしてみた宇宙人は、まず準経験論的方法に頼るのであって、できれば厳密で公理的な証明は差し控えたいと思うのではないか、そして、それでもなお数学を行っていることになるのではないか、と想像している。ことによると、彼らが計算を誤る危険はほんの少し大きいかもしれないが。この点の詳細な論証はThomas Tymockzo (ed), New Directions in the Philosophy of Mathematics. An Anthology, 1998に掲載されたパトナムの論文"What Is Mathematical Truth?"を参照。
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