気送管郵便とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 産業 > 郵便 > 郵便 > 気送管郵便の意味・解説 

気送管

(気送管郵便 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/12 15:09 UTC 版)

病院で使用されている気送管設備(2017年)

気送管(きそうかん)は、圧縮または真空とすることで管内に生じる空気流を利用した輸送設備の一種[1][2]。書類や物品を「気送子」と呼ばれる専用の搬送容器に収めて空気圧で管路内を搬送する設備である[1]

日本ではエアシューターエアシュートとも呼称され、ともに和製英語である。なお、「エアーシューター」は1953年に上野工業株式会社(現:株式会社日本シューター)が出願した登録商標(登録第441450号)である。英語ではpneumatic tube(ニューマチック・チューブ)などと呼ばれる。

概要

気送管設備[1](気送管搬送設備[2])は、建物等の要所に送信や受信を行うための「ステーション」と呼ばれる送受信装置を設置し、これらを気送管路で結び、排風装置(ブロワー)で空気を送って気送子(カプセル)を目的のステーションに搬送する装置である[1]

気送管設備は、ステーション(送受信装置)、ブロワー(排風装置)、気送子(カプセル)、管路、制御装置で構成される[1]。管路には丸型と角型がある[1]。また、方式にはスイッチ式(単管または複管でステーションのスイッチで作動)、自動出発式(単管でスイッチで作動するが、ステーションに待機、自動出発機能、行先記憶機能がある)、フルオートマチック式(気送子に行先記憶機能がありコード番号に合わせて送信機にセットするだけで自動的に搬送される)がある[2]

気送管設備は、現物を搬送する手段として、比較的安価でスピードが速い、自由なレイアウト設計ができる、取り扱いが容易、設備の設置スペースをとらないといったメリットがある[1]。一方で、一回当たりの搬送容量が少ない、搬送物への衝撃を和らげるためインナーケースが必要といったデメリットもある[1]

比較的小さな容器を用いるシステムは、工場、病院[3][4]、オフィスビル[3]、宿泊施設等で、書類[3]・現金・薬品等の実物を容器に詰め、高速に運ぶために使用される。このうち書類・現金の輸送ニーズは電子化のために減っている[3]

一方で、実物を送ることができる気送管特有の機能はデジタル技術で代替できないため、現代でも大病院などでは気送管設備が採用されている[3]。病院内ではIT化によりカルテや伝票といった情報系の搬送物を中心とする搬送システムが構築されるようになったが、2000年代にはむしろ薬剤や検体を中心とする物品系搬送を主体にした搬送システムの構築が主流となっている[5]

歴史

空気圧を利用して管を通して輸送に用いる概念は、アレキサンドリアのヘロンの時代にまで遡る[要出典]。この形式の運搬法は1667年のドニ・パパンの論文が最初の文献とされている[要出典]。1806年、Phineas Balkによって空気圧を交通機関として使用する発明がされた[要出典]。1886年、ビクトリア時代に初めて電信の通信文や電報電信局から近隣の建物に輸送する為に気送管が使用された[要出典]

初期はおもに電報の運搬に用いられ、イギリスで1854年、ドイツで1872年[6]フランスで1875年、アメリカ合衆国で1876年、実用化された。

日本では1909年(明治42年)12月25日、東京において江戸橋東京郵便電信局兜町東京株式取引所の間および、東京郵便電信局と神田郵便局との間に2系統装置されたのが最初の例である[3][7]

気送管ポスト

ベルリンの郵便局(1951年)

気送管ポスト または 気送手紙は圧縮空気管を使用して手紙を送るシステムである。スコットランドの技術者ウィリアム・マードックによって1800年代に発明され、後にロンドン空気輸送会社によって実用化された。気送管ポストシステムはいくつかの大都市で19世紀後半から始まったが、20世紀にはほとんど廃止された。

フランスのパリでは1866年から気送管を用いた手紙の配送システムを構築し1934年には136か所のパリの全郵便局が気送管で結ばれ、数十分で手紙が目的地に到着していた。このシステムは1984年まで稼働していた[8]

気送交通

ニューヨーク市のビーチ・ニューマチック・トランジット(1870年)

1812年にはen:George Medhurstにより、気送管で人員を輸送する交通機関が考案され、後に大気圧鉄道として実現した。

1960年代、ロッキードマサチューセッツ工科大学商務省の援助を得て、大気圧と振り子の力で減圧チューブ内を時速626kmで走行可能な交通機関の研究を行っていた[9]

脚注

  1. ^ a b c d e f g h 酒井 敬介「空気を使った搬送設備」『電気設備学会誌』第25巻第8号、一般社団法人 電気設備学会、2005年、601-604頁。 
  2. ^ a b c 建築設備の知識編集委員会『図解 建築設備の知識(改訂3版)』オーム社、2018年10月23日。 
  3. ^ a b c d e f 昭和の名残のマンホール 兜町の地下に眠る情報レースの歴史【けいざい百景】”. 時事通信 (2022年11月2日). 2022年12月9日閲覧。
  4. ^ 搬送設備 納入実績 岩手医科大学附属病院 S&Sエンジニアリング
  5. ^ 村松 達弥「病院における検体・薬剤搬送用気送管設備の実施例の紹介」『電気設備学会誌』第25巻第8号、一般社団法人 電気設備学会、2005年、623-626頁。 
  6. ^ 病院内搬送システムの歴史 S&Sエンジニアリング
  7. ^ 逓信省 編『逓信事業史』 3巻、逓信協会、1940年、355-358頁。NDLJP:1869671/191 
  8. ^ ギュンター・リアー『パリ地下都市の歴史』東洋書林、2009年9月。ISBN 978-4-88721-773-7 [要ページ番号]
  9. ^ The Remarkable Pneumatic People-Mover • Damn Interesting

参考文献

  • Hadfield, Charles (1967). Atmospheric Railways. Newton Abbot: David & Charles. ISBN 0-7153-4107-3 [要ページ番号]

関連項目

外部リンク





気送管郵便と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「気送管郵便」の関連用語

気送管郵便のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



気送管郵便のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの気送管 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS