気質物とは? わかりやすく解説

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かたぎ‐もの【気質物】


気質物

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/11/26 03:32 UTC 版)

気質物(かたぎもの)は、江戸時代の浮世草子の一種である[1]。特定の職業や身分を設定し、そこに続する人々の特徴的な性格を描いた風俗小説である[2]

歴史

江島其磧の『寛闊役者片気』が気質と題名を付けた初作だが、内容としては坂田藤十郎の死をあてこんだ好色物である[2]。実質的な気質物の第1作は其磧の『世間子息気質』である[2]井原西鶴『本朝二十不孝』の影響が大きいが、『本朝二十不孝』よりも人間の性格と気質を題材にした点で画期的な作品だった[2]。『世間娘気質』『浮世親仁形気』も人気を博し、様々な模倣作も刊行された[2]

享保以後の浮世草子は時代物が主流となり、気質物は一時期廃れるが、多田南嶺が再び気質物を手がけると再び刊行作品が増え始め、明和・安永期は気質物の刊行数が時代物の刊行数を圧倒する[2]。その後は、不自然な内容や技巧主義、単なる町人集成にとどまり、衰退した[2]

気質物の浮世草子一覧

江島其磧
  • 『寛濶役者片気』(1711年頃)[1]
  • 『世間子息気質』(1715年)[1]
  • 『世間娘容気』(1717年)[1]
  • 『浮世親仁形気』(1720年)[1]
  • 『世間手代気質』(1730年)[1]
  • 『諸商人世帯気質』(1736年)[3]
  • 『賢女心化粧』(1745年)[3]

そのほか『和漢遊女容気』もあったものの、これは一代男の後日譚であった[4]

多田義俊
  • 『鎌倉諸芸袖日記』(1743年)[1] - 多田南嶺名義
  • 『世間母親容気』(1752年)[1][5] - 南圭梅嶺名義
上田秋成
不明
  • 『世間長者気質』(1754年)[3] - 其笑・瑞笑の連名名義で自笑の遺作を補ったものとされる[3]
  • 『略縁記出家気質』(1769年)[3] - 四代目自笑名義
永井堂亀友(兵作堂)
  • 『風俗俳人気質』(1763年)[6]
  • 『当世銀持気質』(1770年)[6]
  • 『風流茶人気質』(1770年)[6]
  • 『世間姑気質』(1772年)[6]
  • 『赤烏帽子都気質』(1772年)[6]
  • 『小児養育気質』(1773年)[6]
  • 『世間旦那気質』(1773年)[6]
  • 『笑談医者気質』(1774年)[7]
  • 『世間仲人気質』(1774年)[7]
増谷大梁
  • 『世間化物気質』(1770年)[7]
  • 『世間傾城気質』(1771年)[7]
大雅舎其鳳
  • 『当世宗匠気質』(1773年)[8]
  • 『滅多無性金儲気質』(1775年)[8]

明治・大正

明治時代よりは小説神髄の影響を受けた当世書生気質の登場[9]によって「当世〇〇気質」という書が複数登場した。

  • 当世書生気質坪内逍遥[1]
  • 『当世商人気質』(饗庭篁村[2]
  • 『当世権妻気質』(苔の屋一心)[3]
  • 『当世会社気質』(奥村柾兮)[4]
  • 『当世職人気質』(暁花園霞柳)[5]
  • 『当世ハイカラ気質』(花の本詩庵)[6]
  • 『当世女生気質 松の巻』(稲岡奴之助[7]
  • 『当世奥様気質』(福田琴月)[8]
  • 『当世細君気質』(原題: That Wife of Mine、佐々木邦訳)[9]
  • 『当世良人気質』(原題: That Husband of Mine、佐々木邦訳)[10]
  • 『当世気質新奥様』(黒田湖山[11]
  • 『当世大学生気質』(東京帝国大学新聞社 編)[12]

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j 気質物 コトバンク
  2. ^ a b c d e f g 日本古典文学大辞典編集委員会『日本古典文学大辞典第1巻』岩波書店、1983年10月、644-645頁。 
  3. ^ a b c d e 藤岡作太郎 1917, p. 275.
  4. ^ 藤岡作太郎 1917, p. 274.
  5. ^ 藤岡作太郎 1917, p. 292.
  6. ^ a b c d e f g 藤岡作太郎 1917, p. 301.
  7. ^ a b c d 藤岡作太郎 1917, p. 302.
  8. ^ a b 藤岡作太郎 1917, p. 304.
  9. ^ 当世書生気質 コトバンク

参考文献

外部リンク


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