毒牙を持つ可能性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/29 02:48 UTC 版)
「シノルニトサウルス」の記事における「毒牙を持つ可能性」の解説
2009年、鞏恩普の率いる研究チームは保存状態のよいシノルニトサウルスの頭骨に、恐竜としては初めて毒を持っていた可能性のある特徴を見出した。上顎骨の中ほどに位置する異常に長く牙のような歯に、顕著な溝が歯の後方に向かって外面上に走っているのを発見された。これは有毒動物のみに見られる特徴である。また、彼らは上顎の歯のすぐ上にある空洞は毒腺の軟組織があった場所である可能性があるとした。このシノルニトサウルスの独特の特徴は鳥などの小型の獲物を捕獲するのに特化したもので、長い牙は現在のヘビのように、鳥の羽毛を貫通し、毒液を注入して動けなくして狩るためのものであると示した。彼らはまた、顎の先端に位置するやや前方の尖った短い歯は、鳥から羽毛を取り除くために使用されたものであることを示唆した。 しかし、2010年に Federico Gianechini らのチームはシノルニトサウルスが有毒であるということに疑義を投げかける主張の論文を発表した。Gianechinらは溝のある歯がこの属に固有なものではなく、他のドロマエオサウルス科の属を含む多数の獣脚類にも存在するとした。彼らはまた、この歯が先述のように異常に長いわけではなく、むしろ歯槽から外れて出てきたもので、溝は潰されて平らな化石になって保存される際に生じたアーティファクトであると示した。最後に、Gianechinらは頭骨には通常の見られる洞しか見つからず、鞏らが毒腺の在り処と想定したような空洞は自分たちには見つけられなかったとした。 同じ号の雑誌の中で、鞏らは自分たちの発見に疑義を投げかけた2010年の研究についての再評価を提示した。鞏らは溝のある歯が獣脚類には一般的であることを認めたが(羽毛のあるマニラプトル類に限定されていることが示唆されるが)、毒は全ての爬虫類ではないにしろ、全ての主竜類での原始的な特徴であり、特定の系統にのみ保存されたものだという仮説を立てた。また、ホロタイプ標本の歯が完全に自然な状態ではなかったことは認めたが、著しく歯槽から飛び出したものだという主張には異議を唱えた。鞏らの再評価ではまた、他の未記載の確実な標本では完全に関節した状態の歯でも同様の長さであったと主張した。 なおBBC制作のドキュメンタリー作品『プラネット・ダイナソー』では、毒牙を使って自分よりも大きな植物食恐竜のジェホロサウルスを襲う描写がなされている。ただしこちらでもナレーションでは「毒液袋があったと思われる場所」「どうやらシノルニトサウルスは毒で獲物を殺していたようです」と断定を避ける形で説明されている。
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