歩き、泳ぐ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/21 01:09 UTC 版)
姿勢は低く、長く大きな体つきである。四肢は力強く、尺骨は陸上で体重を支えるのに十分の強さを持っていた。肘は頑丈かつ柔軟性があり、しかし、水生への適応を示して後方に曲がる構造になっていた。手首も柔軟性があって現生クジラ類のそれとは違っている。大腿骨も頑丈であり、これらのことから、彼らは陸上でも動き回ることができたと考えられる。とは言え、その大腿骨は陸上で存分に運動するための筋肉を支持するような余地は無く、おそらく、現生のアシカが歩くことができるというのと大きくは違わない程度のものであったと想像される。前肢は短い。後肢は長く、前肢以上に強靭である。その足指の間には水かきを具えており、これが水中での推進力を生んでいたと思われる。また、その爪先には祖先から引き継いだ蹄(ひづめ)を、退化した小さなものではあったが、維持していた。四肢は陸上でも機能したであろうが、そこを主たる生活圏にしていたとは思えない。ワニほど低姿勢ではないにしても、陸上では地を這うように移動したであろう。水かきのついた足は陸上を歩くのにはいささか不向きと思えるが、陸地と水域が複雑に入り組んだ浅瀬などを歩き回るのには都合が良かったかもしれない。なお、2016年の名古屋大学の肋骨の強度の研究から、前脚で体重の約半分を支える必要がある陸上哺乳類ほど丈夫な肋骨をアンブロケタスが持っていなかったことが判明し、浮力を得て体を維持する完全な水生生活を送っていた可能性が浮上している。この動物からは、「水にも入る」といった程度の適応とは異なる進化の段階にクジラ類が入っていたことを確かめられる。
※この「歩き、泳ぐ」の解説は、「アンブロケトゥス」の解説の一部です。
「歩き、泳ぐ」を含む「アンブロケトゥス」の記事については、「アンブロケトゥス」の概要を参照ください。
- 歩き、泳ぐのページへのリンク