枝義理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/05 16:19 UTC 版)
枝義理(えだぎり)とは香典を渡す際、喪主とは異なる(葬家外の)親族に対して宛てた香典である。単に枝(えだ)とも呼ばれ、故人の長男が家督を継いでいると仮定した場合、嫁ぎ先へ入った長女・次女等や分家した次男・三男等に対して渡される。家を出た子息に対しても親を亡くしたことに対するお悔やみの気持ちを込めたものである。 地域の結びつきが強かった近世において全国の山村の一部に限定的・散逸的にみられたが(前述「香典の意義」参照)、現在も風習として色濃く残っているのは長野県上伊那郡(上伊那地域)の8市町村(伊那市、駒ヶ根市、辰野町、箕輪町、飯島町、南箕輪村、宮田村、中川村)だけである。 この地域では、故人および喪主とは直接縁のない者が残された子息に対して渡すことが一般的であり、多くの場合、その子息の友人や所属する職場がその子息本人に宛てて香典を渡す。葬家内であっても喪主以外に成人した兄弟姉妹が同居している場合、友人や職場からあえてその兄弟姉妹に宛てて渡される場合も多い。故人の孫にあたる成人者が葬家内いる場合も同様である。また、故人の兄弟姉妹に対して渡す場合もある。 枝義理に対して渡された香典は喪主の財産とはならず、枝に書かれた親族の財産となる。このため香典帳への記載は後で枝書きを付けて明確に区別されたり、あえて記載されず別にまとめられることもある。親族ごとに香典帳をしたためる場合もある。 枝義理の書き方は、香典袋の表の右上隅に「○○様」と宛てる親族の氏名を黒字で書き記す。薄墨や筆字である必要はなく、あくまでも枝が判ればよい。なお、枝義理となる親族への宛て名を記すことを「枝を書く」と呼ぶ。 枝義理に対して渡された香典の返礼(香典返し)は、喪主がまとめて行うか枝義理に書かれた者が行うかは家によって異なるが、多くの場合、事前に喪主(葬家)と枝義理となる者とで取り決めがなされている(喪主が行う慣習となっている地域もある)。 地域の風習であるため、地域外や県外から焼香等に訪れる者にはこの風習を理解していない者も多く、枝書きがないために親しい友人に宛てたつもりが喪主である兄弟姉妹へ渡ってしまうこともある。これらの地域の慣例として、枝書きがない場合でも喪主に心当たりがない相手の場合(親族の友人や職場であることが明らかな場合)、葬儀の後に親族間において宛先を再配分するのが一般的である。
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