析出硬化系の工業的発明
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/21 15:56 UTC 版)
「ステンレス鋼の歴史」の記事における「析出硬化系の工業的発明」の解説
詳細は「析出硬化系ステンレス鋼#歴史」を参照 オーステナイト系18-8ステンレス鋼の耐食性を維持したまま強度をさらに高めたいという欲求をもとに、欧米の鉄鋼業各社はそのような課題に取り組んでいた。1930年ごろ、18-8ステンレス鋼をもとにして析出硬化と耐食性の関係が調べられた。1929年、ルクセンブルクのウィリアム・クロール(英語版)が、チタンを添加して母材に微細なチタン炭化物を析出させて強化した鋼種を作製した。ハロルド・コブは著書で、このクロールの研究を析出硬化系ステンレス鋼の最初の発見として挙げている。1932年には、クルップ社のR.バスムートが18-8ステンレス鋼にボロンを添加したときの析出硬化現象を調査・報告した。それによると、800℃の時効処理でブリネル硬さ450に達する材料が得られたという。また1933年には、イギリスのモンド・ニッケル・カンパニー(英語版)のL.B.ファイルとD.G.ジョーンズが、オーステナイト系をベースにしてオーステナイト・フェライト二相組織の鋼種を作製し、それを冷間圧延後に低温焼なましすると硬度が上がることを報告した。 その後も析出硬化系に相当する鋼種の研究や特許取得はあったが、析出硬化系を最初に実用化したのは米国のカーネギー・イリノイ・スチール(英語版)である。カーネギー・イリノイ・スチールが製造したのは、クロム 17 %、ニッケル 7 % のオーステナイト系ステンレス鋼にチタンとアルミを添加した鋼種で、常温でマルテンサイト組織を持つ種類の析出硬化系鋼種であった。約480℃の時効処理で高強度を得ることができ、引張強さは約 1400 MPa が得られた。この鋼種の特許が取得されたのは1945年および1946年だったが、第二次世界大戦中にも米国で非公表に使用されていたという。カーネギー・イリノイ・スチールが開発した鋼種は、カーネギー・イリノイ・スチールの親会社であったUSスチールから "Stainless W" という名で1946年より販売され、最初に実用された析出硬化系の鋼種となった。
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