木星の衛星を利用する方法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/31 02:42 UTC 版)
「経度の歴史」の記事における「木星の衛星を利用する方法」の解説
日食や月食の代わりに、木星の衛星(ガリレオ衛星)の食を利用する方法である。木星の衛星が木星の影にかくれて見えなくなったり、再び現れたりする時間を予測しておいて、それと実際に観測した時間との差から経度を求める。 この方法を最初に提案したのはガリレオ・ガリレイである。ガリレオは1610年に、木星に衛星があることを発見した。そしてその翌年から本格的に観測を行い、経度測定に役立たせようとした。 木星の衛星食が起こる回数は、日食や月食と比べて非常に多く、たとえば衛星イオは年間約1,000回の食が発生する。そのため経度を測定するには都合が良い。ガリレオはこの方法をスペインの懸賞に持ち込んだが、観測に手間がかかるという理由で受賞には至らなかった。この方法の欠点は、望遠鏡を使っても木星の衛星は小さくぼやけた形にしか見えないため、揺れる船上でその姿をとらえるのが非常に難しい点にあった。 しかしこの方法は、地上で経度を測るには有効であり、ガリレオの死後の1650年代ごろから使用されるようになった。ジョヴァンニ・カッシーニは長年の観測を元に1668年に新しい木星の運行表を作成した。そしてカッシーニは木星の衛星を使った経度の求め方を手紙で天文学者に伝え、実践を呼びかけた。ジャン・ピカールとフィリップ・ド・ラ・イールは1679年から三角測量を使ってフランス海岸線の測量を始めたが、この時の経度の確定も木星の衛星を観測することにより行っていた。 17世紀の終わりごろには、この方法を使った経度測定の精度は1度以内にまで向上した。
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