木下夕爾とは? わかりやすく解説

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木下夕爾

木下夕爾の俳句

あくびしていでし泪や啄木忌
かたつむり日月遠くねむるなり
この丘のつくしをさなききつね雨
こほろぎやいつもの午後のいつもの椅子
たべのこすパセリのあをき祭りかな
つくねんと木馬よ春の星ともり
てのひらにうけて全き熟柿かな
とけてゐるアイスクリーム秋の蟬
とぢし眼のうらにも山のねむりけり
にせものときまりし壺の夜長かな
ふりいでし雨の水輪よ休暇果つ
ふりむいてまだ海見ゆる展墓かな
児の本にふえし漢字や麦の秋
兜虫漆黒の夜を率てきたる
冬の坂のぼりつくして何もなし
噴水にひろごりやまず鰯雲
地球儀のあをきひかりの五月来ぬ
地球儀のうしろの夜の秋の闇
家々や菜の花いろの燈をともし
寒林に日も吊されてゐたりしよ
少年に帯もどかしや蚊喰鳥
春昼のすぐに鳴りやむオルゴール
春暁の大時計鳴りをはりたる
枯野ゆくわがこころには蒼き沼
梟や机の下も風棲める
水ぐるまひかりやまずよ蕗の薹
泉のごとくよき詩をわれに湧かしめよ
海の音にひまはり黒き瞳をひらく
海鳴りのはるけき芒折りにけり
炎天や昆虫としてただあゆむ
秋天や最も高き樹が愁ふ
稲妻や夜も語りゐる葦と沼
花冷の包丁獣脂もて曇る
花蕎麦に雲多き日のつづきけり
遠雷やはづしてひかる耳かざり
鮟鱇に似て口ひらく無為の日々
 

木下夕爾

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/09 23:09 UTC 版)

木下 夕爾(きのした ゆうじ、1914年大正3年)10月27日 - 1965年昭和40年)8月4日)は、日本詩人俳人。本名・優二。

人物・来歴

広島県福山市御幸町に生まれる。広島県立府中中学(現・広島県立府中高等学校)を卒業後、1933年にいったんは第一早稲田高等学院文科(仏文科)に入学するが、養父の結核発病に伴い家業を継ぐために転学した。1938年名古屋薬学専門学校(現・名古屋市立大学)を卒業し、広島県福山市の実家で薬局を営む。以後、終生郷里を離れなかった。この間堀口大学に傾倒し影響を受けており、13歳のときには堀口の詩誌「若草」で特選を取っている。1940年、第一詩集『田舎の食卓』を刊行、第6回文芸汎論賞を受賞。1949年に詩誌「木靴」を創刊・主宰。以後の詩集に『生まれた家』(1940年)『笛を吹くひと』(1958年)など。日本詩人クラブ日本現代詩人会に所属。

戦中、疎開してきていた同郷の作家井伏鱒二らと親交を持った。夕爾の十周年忌の1975年の追悼公演で、井伏は夕爾からの最期の手紙を読み上げるも途中で絶句し、涙ながらに公演を切り上げた。

また1944年より安住敦の俳誌「多麻」に投句、1946年より久保田万太郎の俳誌「春燈」に参加。万太郎に激賞され「春燈」主要同人となる。1956年句集『南風妙』、1959年『遠雷』を刊行。1961年、広島春燈会を結成、また句誌「春雷」を創刊・主宰する。句風は『遠雷』までの、心象風景を強い叙情性をもって描いた時期と、『遠雷』以降の、情を適度に交えつつ写生の方法を生かした時期とに大きく分けることができる[1]。総じて瀟洒で線の細い句であり、師である万太郎にならい、平易な言葉による柔らかな表現を目指した[2]。代表句として「家々や菜の花いろの灯をともし」(『遠雷』所収)がよく知られている。

1965年横行結腸癌により福山市御幸町の自宅で死去、50歳。戒名は淳誠院釈夕爾法圓居士[3]。没後に刊行された『定本木下夕爾詩集』は第18回読売文学賞を受賞した。

早稲田大学名誉教授で仏文学者村上菊一郎は親戚にあたる。

著作

尾道市にある小野十三郎『車窓で』・木下夕爾『春の鐘』詩碑

図書

校歌

参考文献

  • 成瀬櫻桃子編 『木下夕爾句集』 ふらんす堂文庫、1994年
  • 齋藤慎爾、坪内稔典、夏石番矢、榎本一郎編 『現代俳句ハンドブック』 雄山閣、1995年
  • 栗谷川虹『露けき夕顔の花 −−詩と俳句・木下夕爾の生涯−−』 笠岡愛の善意銀行、2000年
  • 坂口昌弘著『文人たちの俳句』本阿弥書店

脚注

  1. ^ 鎌倉佐弓 「木下夕爾」『現代俳句ハンドブック』 36頁。
  2. ^ 成瀬櫻桃子 「木下夕爾再考」 『木下夕爾句集』 74頁-80頁。
  3. ^ 岩井寛『作家の臨終・墓碑事典』(東京堂出版、1997年)122頁

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