有給休暇と皆勤手当
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/05 08:10 UTC 版)
国や行政が労働者の長時間労働によるうつ病などの精神疾患や過労死、過労自殺を防ぐための時短政策の一環として有給休暇取得率の向上を進めているが、皆勤手当が存在する企業では労働者にとって有給休暇の取得をためらわせる原因の1つでもあり、第136条において有給休暇を取得した労働者に対し使用者は賃金の減額や不利益な取り扱い をしないよう定められているため、有給休暇の取得による皆勤手当の不支給または減額は不適切な行為として各県担当課や地方労働局などが警鐘を鳴らしている。ただし、労働基準法上、罰則は設定されていないため、労働基準監督官等へ申告しても、結局は強制力のない行政指導が行なうまでしかできない。罰則がないので、送検のような刑事処分をすることは理論的に不可能である。 皆勤手当を定めている事業所において、有給休暇を取得した労働者を欠勤として取り扱い皆勤手当てを支給しないことに対し、賃金の不当な不払いとして違法とする判決が下されている(横浜地判 昭和51年3月4日)一方で、有給休暇の取得による皆勤手当の不支給または減額は第39条の精神に反するとしつつも、皆勤手当の不支給または減額は公序に反するとして無効の主張はできないとする最高裁判例がある(最判平成5年6月25日)。 後者の判例では、皆勤手当の金額が支給される給与の月額に対し2%にも満たない小額(最大で1.85%)であったこと、事業内容から日々の業務において欠員が出ることによる収益の悪化が確実視されることから、皆勤手当の不支給または減額は有給休暇の取得を一般的に抑制する趣旨に出たものではないと判断された。つまり、有給休暇取得による皆勤手当の不支給または減額が無効と判断されるか否かはケースバイケースであり、個々の事案の状況から判断される。
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