晶癖調整剤
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/16 13:46 UTC 版)
1915年の大学院時代最初の研究で、フェリシアン化カリウム(赤血塩) の水溶液に少量の酸を加えて蒸発させると通常の板状結晶でなく針状の結晶が得られ、その原因は加水分解で生じた微量のアクオ五シアノ鉄錯塩がフェリシアン化カリウムの結晶のある特定の面に吸着され、その面の成長が阻害されて他の面だけが選択的に成長したためであることを見出している。このように同じ物質の結晶が異なる形を示すことを晶癖と呼ぶ。この論文中ではなぜそのような現象が起きるのかにまでは言及していないが、結晶とは、原子や分子が三次元的に規則正しく配列したものだから各結晶面には三次元的構造が反映され、それぞれの面の性質が異なるためである。 飯盛は熔融塩系にも水溶液系のアナロジーが成り立つと考えた。その裏付けは永年の鉱物採取の経験から、同じ鉱物であっても産地が異なると晶癖が異なり、その原因は共存する成分が異なるためであることを知っていたからである。人造宝石の開発ではこのことを踏まえ、試行錯誤を繰り返して固溶体中に晶化剤 (特許公報中では鉱化成分) を繊維状に析出させることに成功した。この時に晶癖をコントロールするために添加する物質を「晶癖調整剤」と名付けた。 「晶癖調整剤」は飯盛の造語であって以後使われることは無かった。現在では「媒晶剤」という言葉が一般化して使われている。意味はまったく同じである。溶液から結晶を析出させる工程 (晶析) は工業的に広く行われ、媒晶剤、媒晶効果、媒晶機構に関する研究が多数行われている。
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