時課
(時祷 から転送)
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時課(じか、ギリシア語: ὧραι, ラテン語: Divinum Officium, ロシア語: часы , 英語: hours)とは、キリスト教(正教会・カトリック教会)における特定の奉神礼・典礼を指す用語。
- 狭義 - 「時課」の名を持つ奉事である一時課・三時課・六時課・九時課(1時課・3時課・6時課・9時課)
- 広義- 時を定めて行われる日々の祈りの全て
本記事では広義の時課全体について詳述する。
正教会
概要
正教会において時課とは、時を定めて行われる奉神礼である昼夜奉事(ちゅうやほうじ)のすべてを指す。狭義には昼夜奉事のうち、時課との名を持つ奉事(一時課・三時課・六時課・九時課)のみを指す。それぞれ時を定めて行われ、それぞれ意義が与えられている。聖詠・讃詞・カノン・連祷などから構成されている。
時間
旧約時代の伝統を維持しているユダヤ教と同じく、正教会の一日は日没から始まる(殆どの他教派でも同様)。創世記第1章に「夕あり、朝あり、是れ一日なり」とあることによる[1]。例えば一般でいう土曜日の日没時は日曜日の始まりと位置付けられ、一般でいう日曜日の日没時は月曜日の始まりと位置付けられる。12月25日(ユリウス暦使用教会では1月7日に相当)のクリスマスが、前日の12月24日(ユリウス暦使用教会では1月6日に相当)の晩であるクリスマス・イヴに始まるのも、こうした日没から一日が始まる教会暦の方式に由来する。
聖体礼儀はこうした昼夜奉事とは別枠のものとして扱われる。これは、聖体礼儀ではイイスス・ハリストス(イエス・キリスト)の復活が中心に記憶されるが、復活の時刻は神秘に属していて画定されていないことによる。福音書にはハリストスが復活した瞬間についての記述は存在せず、聖伝でもそれは明らかにされていない。
昼夜奉事の一覧・意義
正教会における昼夜奉事一覧 | ||
名 | 時刻の目安 | 記憶するテーマ |
晩課(ばんか) | 午後6:00 | 天地創造・陥罪・ハリストス(キリスト)の受難に際し血と水が流れたこと ・アリマフェヤのイオシフの記憶 |
晩堂課(ばんどうか) | 午後9:00 | 睡眠前の痛悔・ハリストスの葬り |
夜半課(やはんか) | 午前0:00 | 最後の審判・ゲフシマニヤの祈り・ハリストスの逮捕(受難の始まり) |
早課(そうか) | 午前3:00 | 起床への感謝・神への讃美・ユダヤ人によるハリストスに対する裁判 |
一時課(いちじか) | 午前6:00 | 異邦人(ピラト)によるハリストスに対する裁判 |
三時課(さんじか) | 午前9:00 | 聖霊降臨(せいれいこうりん)、ピラトの手洗い、ハリストスの茨の冠と鮮やかな衣 |
六時課(ろくじか) | 正午 | ハリストスの十字架刑、十字架上のハリストス |
九時課(くじか) | 午後3:00 | ハリストスの死 |
奉事の実施
時課全てを行う事は、一定以上の規模の修道院以外ではまず行われない。また修道院でも、8つそれぞれを目安の時刻通りに区切って行うのではなく、幾つかの課をまとめて行う事が普通である。
主日(日曜日)および大祭(十二大祭など)にあたっては、晩課・早課・一時課をまとめてこれを盛儀とした徹夜祷と呼ばれる祈りが行われる。街の教会では大祭などの限定された祭日にのみ公祈祷が行われる事が多く、結果的に、徹夜祷と、三時課・六時課を伴う聖体礼儀が行われる頻度の方が高いことが多い。
カトリック教会
カトリック教会には以下の時課がある。
- 朝課
- 賛課
- 1時課(現在は廃止。)
- 3時課
- 6時課
- 9時課
- 晩課
- 終課
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脚注
参考文献
関連項目
外部リンク
聖務日課
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聖務日課(せいむにっか、ラテン語:officium divinum, Liturgia horarum)は、カトリック教会などで行われる典礼の一つ。毎日行われる[1]。カトリック教会では第2バチカン公会議まで全世界でラテン語で唱えられており、聖職者や修道者などによるものという位置づけであったが、典礼改革によってすべての信徒による祈りとしての位置づけに改められ、使用される言語はラテン語だけでなく、各言語に拡大した。1973年にカトリック中央協議会から刊行された日本語版聖務日課書は『教会の祈り 新しい聖務日課』と題されている[2][3]。
概説
第2バチカン公会議文章である『典礼憲章』(Sacrosanctum Concilium)の第四章は「聖務日課」に関する規定である。これによれば聖務日課は「古来のキリスト教伝統によって、神への賛美を通して昼夜の全過程が奉献される」ことであった[4]。この本来の目的を踏まえ、煩雑にあった時課を整理し、賛課(Laudes)を「朝の祈り」とし、晩課を「夕の祈り」としてこの二つを主要時課とし、朝課を「読書課」としていつでもとなえることができるように変えた[5]。さらに終課を「寝る前の祈り」とし、一時課を廃止、三時課、六時課、九時課は任意でひとつを選んでも良いものとした[6]。さらに聖務日課で唱えられる詩篇および聖書朗読の箇所、読書の内容を典礼暦を元に再配分した上で、より多くの人の祈りとするために、使用される言語をラテン語だけでなく、各言語に拡大した[7]。なお、聖務日課を唱えることは歌隊共唱の義務を負う団体および修道者の義務とされている[8]。
また一般的ではないが聖母マリアの小聖務日課も伝統的に唱えられてきた。現在の教会では義務ではなく私的信心業と位置づけられる。日本では世のひかり社から刊行されている[9]。
構造
聖務日課の祈りの中心は旧約聖書の詩篇を唱えることにある。各時課によって違いはあるが、聖務日課の基本的なやり方は以下のとおりである。
- 初めの祈り(「神よ、私を力づけ急いで助けに来てください。栄光は父と子と聖霊に初めのように今もいつも世々に。アーメン。」)
- 良心の糾明および回心の祈り(寝る前の祈りのみ)
- 賛歌
- 詩篇唱和
- 聖書朗読(読書課のみ聖書以外の教父などの著作も朗読される。)
- ザカリアの歌(ベネディクトゥス・ドミヌス・デウス、ルカによる福音書1章68~79、朝の祈りに唱える)、マリアの歌(マニフィカト、ルカによる福音書1章46-55、夕の祈りに唱える)、シメオンの歌(ヌンク・ディミティス、ルカによる福音書2章29~32、寝る前の祈りに唱える)
- 共同祈願(朝の祈り、夕の祈りのみ)
- 主の祈り(朝の祈り、夕の祈りのみ)
- 賛美の賛歌(テ・デウム、読書課のみ)
- 結びの祈り
- 結び
- 聖母賛歌(レジーナ・チェリ、サルヴェ・レジーナ、アルマ・レデンプトリス・マーテル、アヴェ・レジーナ・チェロールムから一曲、寝る前の祈りのみ)
なお、聖務日課の詩篇は全体が一定の分量で区切られており、祈りをささげるものが交代で唱えることができるスタイルになっている。
脚注
- ^ 「教会の祈り 日々の手引き 2024年度」カトリック中央協議会。2024年1月21日閲覧。
- ^ 「教会の祈り 新しい聖務日課」カトリック中央協議会。2024年1月21日閲覧。
- ^ 「教会の祈り 日々の手引き 2024年度」62頁。2024年1月21日閲覧。
- ^ 『典礼憲章』、第83項
- ^ 『典礼憲章』、第89項c
- ^ 『典礼憲章』、第89項d,e
- ^ 『典礼憲章』、第101項
- ^ 『典礼憲章』、第95項および第98項
- ^ “聖母マリアの小聖務日課”. 世のひかり社. 2024年1月22日閲覧。
参考文献
- 日本カトリック典礼委員会 編、『教会の祈り~新しい聖務日課~』、カトリック中央協議会
- 南山大学監修、『第2バチカン公会議公文書全集』、中央出版社(現:サンパウロ)、1986年
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