時刻表運行方式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/13 00:16 UTC 版)
設備の観点でもっとも単純な保安方式は、単に決められた時刻表に厳正に基づいて列車を運行させることである。全ての乗務員が熟知しているべき、固定された時刻表が作成される。各列車は、決められた時刻に決められた区間を走り、それ以外の列車はその区間を走行することを許されない。ダイヤ上で他の列車と衝突しないような計画が作成されていて、全ての列車が完全にそれに基づいて走っている限りは、事故は発生しないことになる。 単線の線路を列車が対向して運行している時は、対向列車を待ち合わせる場所がダイヤ上で決められ、各列車は必ず対向列車を決められた場所で待たなければならない。どの列車も対向列車が到着するまでは出発することが許されない。アメリカでは、2つの緑の旗(夜間は緑のライト)が、最初の列車に続行して次の列車が来ることを示し、待機列車はその続行列車も待たなければならないことを意味している。これに加えて、旗を持ってきた列車は8回のブラストと汽笛を到着に際して鳴らし、待機している列車はこれに応えて8回のブラストを響かせることになっている。 時刻表運行方式には欠点が存在する。まず、前方の線路が開通している確固たる保証が何も存在せず、開通している時刻であると計画されているに過ぎないということである。機関士が計画を見誤ったり勘違いしたりした場合に事故を防ぐ手段は何も用意されていない。 またこの方式では、機関車の故障やその他の問題の発生によって列車が運行できなくなったり遅れたりした場合への対処が困難である。駅間で列車が立ち往生してしまった場合、その列車の乗務員は他の列車を止めるためすぐに列車防護を行う必要がある。十分列車から離れた位置まで歩いて警告の旗を立てるか、信号弾を打ち上げるか、信号雷管を設置して、他の列車の乗務員に立ち往生している列車がいることを知らせることになっていた。あらかじめダイヤ上それらの列車防護に必要な時間を見込んで列車間隔を設定する必要があった。 さらに、このシステムは柔軟性に欠けるという問題もある。事前の通知なしには列車を追加で走らせることができず、遅らせたり運転整理を実施したりすることもできない。 上述の問題の結果として、システムが非効率であるという問題もある。柔軟性を備えるために、ダイヤ上で各列車に遅れを許容する広い時間幅を与える必要があり、路線の各列車による占有時間が本来必要な時間よりも長くなってしまう。 そうした問題があるものの、このシステムは列車より速く情報を伝達する通信手段がなくても広範囲に施行することができ、北アメリカでは鉄道の草創期に一般的に用いられている方式であった。
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