映画化までの背景・評価
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/01 04:57 UTC 版)
「剣 (小説)」の記事における「映画化までの背景・評価」の解説
『剣』は、小説発表からわずか5か月で映画化された。雑誌に掲載された小説を市川雷蔵が読んで、自ら映画化を希望した。雷蔵は1964年(昭和39年)が明けるとすぐ撮影準備に入り、三島も参加する午前4時の寒稽古(学習院大学剣道部)見学をしているが、多忙を極める2人がここまでするのは、作品への情熱、そして、三島が雷蔵を本物の俳優だと認め、期待していたからだろうと、大西望は述べている(炎上 (映画)#市川雷蔵と三島由紀夫も参照)。 『剣』はテレビドラマとしても映像化されているが、三島はそのドラマと映画を比較し、「加藤剛の主役は、みごとな端然たるヒーローだが、映画の主役の雷蔵と比べると、或るはかなさが欠けてゐる。これはこの役の大事な要素だ」と感想を「週間日記」の金曜日に書いている。 塩田長和は『日本映画五十年史』の中で、映画『剣』について、「ここでは雷蔵が三島の分身ではないかと思わせられるほどだった」と評している。大西望は、雷蔵が次郎の正しさ強さ、「はかなさ」を見事に表現し、三島の理想を体現することに成功していると評し、「三島由紀夫が描き、市川雷蔵が体現した反時代的な青年は、三島の理想とした反時代的な〈美〉を象徴する人物でもある。三島はこういった青年を描くときに、共通した特徴を持たせている。それが〈微笑〉である」としている。また、市川雷蔵という俳優自体に、「生活臭がなく人生にも芸道にもストイックなところ」があったとし、そこが、「人生」よりも「美」を選ぶ三島作品の主人公たちを表現できた理由だと解説している。
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