早いと速いの意味の違い・使い方の解説
「早い」と「速い」の意味の違いは、「ある基準の時間よりも前の時点でものごとが行われること」を指すか、「一定の期間内の動作量が多いこと」を指すか どうかにあります。「早い」は、 ある基準の時間よりも前の時点でものごとが行われることを意味し 、「速い」は、一定の時間の中で多くの動作が行われることを意味します。「早い」「速い」どちらも「はやい」と読みます。
■ 字義から理解する「早い」と「速い」の意味の違い
白川静『常用字解』(平凡社、2003)では、「早」という漢字について下記のように解説されています。
“仮借。匙の形。早はさじの意味に用いることはなく、その音を借りて“はやい、あさ、わかい”の意味に用いる”
つまり「早」は、「ある基準の時間よりも前の時点でものごとが行われること」を伝えたい時に、適切に表す言葉がなかったため、同音や類音である既成の漢字を借りて、当て字として作られた漢字です。そのため、「早い」とは、「ある基準の時間よりも前の時点でものごとが行われること」を意味します。また、「ものごとを急いで行う様子」という意味でも使用されることがあります。
一方、「速い」とは、「一定の時間内に行われる動作が多いこと」を意味します。「速い」という言葉に含まれる「速」という漢字は、形声文字 です。小川 環樹・西田 太一郎・赤塚 忠・阿辻 哲次・釜谷 武志・木津 祐子編『角川新字源 改訂新版』では、「速」という漢字について下記のように解説されています。
“形声。辵(チャク)と、音符束(ソク)とから成る。いそぐ、「はやい」意を表す。”
■「早い」と「速い」の使い分け
「早い」と「速い」は、その言葉が「ある基準の時間よりも前の時点でものごとが行われること」を指すか、「一定の期間内の動作量が多いこと」を指すか によって使い分けましょう。
たとえば、想定していたスケジュールより前倒しになって仕事が進んでいる場合に「進行がはやい」と言いたい場合は、「想定していたスケジュール」という、一定の基準の時間よりも前の時点でものごとが行われていることを指し示したいので、「早い」を使用します。
一方、仕事の処理能力が高く、短い時間で多くの仕事をこなせる場合に使う「仕事がはやい」は、一定の時間内に行われる動作が多いことを指し示したいので、「速い」を使用します。
このように考えると、「早い」と「速い」の使い分けは下記のように分類できます。
早い……時が経つのは早い、進行が早い
速い……仕事が速い、計算が速い、作業が速い、減りが速い
■「早い」の使用例
・今年は春が訪れるのが、例年よりも早い気がする。
・待ち合わせの時間より1時間も早く到着しちゃったわ。
・うちの子どもは、感情を表現するのが他の子どもよりも早かった。
・思ったよりもデザインができあがるのが早かったので、余裕をもってプロジェクトを勧められそうだな。
■「速い」の使用例
・小学校では、足が速い人がクラスの人気者だった。
・もっと速く仕事ができるようになって、チームの力になりたいな。
・速さも大事だけれど、ていねいさはそれ以上に大切です。
・もうそんなにビールを飲んだなんて、今日はペースが速いね。
■「早い」の類義語、対義語
「早い」の類義語は、「早期」「早々に」などが挙げられます。また、「早い」の対義語は、「遅い」などが挙げられます。
■「速い」の類義語、対義語
「速い」の類義語は、「高速」「スピーディ」「ハイスピード」などが挙げられます。また、「速い」の対義語は、「遅い」「ゆっくり」などが挙げられます。
「遅い」は、「早い」と「速い」どちらの対義語としても使用できます。ただ、どちらの対義語として使うかによって、意味は異なります。「早い」の対義語として使用する場合は「ある基準の時間よりも後の時点でものごとが行われる」ことを意味し、「速い」の対義語として使用する場合は「一定の時間の中で行われる動作が少ない」ことを意味します。
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