日本高僧伝要文抄
日本高僧伝要文抄
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日本高僧伝要文抄 | |
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編纂 | 宗性 |
言語 | 漢文 |
執筆時期 | 奥書 巻1:建長元年10月5日(1249年11月10日 巻2:建長元年7月29日(1249年9月7日) 巻3:建長3年10月1日(1251年11月15日) |
起源 | 東大寺 |
写本 | 宗性自筆本 |
初刷 | 『大日本仏教全書』巻101(1913年2月25日) |
ジャンル | 高僧伝 |
文章全長 | 3巻42伝 |
主題 | 日本仏教史 |
登場時代 | 飛鳥時代、奈良時代、平安時代 |
『日本高僧伝要文抄』(にほんこうそうでんようぶんしょう)は東大寺僧宗性による日本の高僧伝の抄本[1]。建長元年(1249年)、同3年(1251年)成立。散逸した『延暦僧録』の抄文を含む[2]。
概要
本作は既存の日本の高僧の伝記の抜き書きを集めたものであり、18人の単独の伝記と『延暦僧録』より24人の伝記を収録している[3]。抜き書きされている伝記について、横内裕人は菩提僊那伝と道場伝を除き「公的記録あるいはそれに准ずる伝記を用い」、「往生伝、説話集の類は引用していない」と総括している[4]。
宗性は本作の撰述に先立って、抜き書き箇所を箇条書きした『日本高僧伝指示抄』(にほんこうそうでんしじしょう、以下『指示抄』)を作成している。『指示抄』には菩提僊那、道場、護命、『延暦僧録』の項目がない他、『指示抄』に挙げられているが『日本高僧伝要文抄』の本文に確認できない箇条もある[5]。
奥書と識語より、巻1と巻2の大部分は建長元年(1249年)7月から10月に東大寺知足院で書写されたとわかる。ただし、書写順序は配列通りとはなっていない。巻3は建長3年(1251年)10月1日於東大寺知足院の奥書を持っている。とはいえ、巻3の明詮伝と増利伝は明詮伝→相応伝→尊意伝→増利伝(相応伝・尊意伝は巻2)の順で連続する綴じ目の符丁があるため、順番に書写されたとみられる。つまるところ、『指示抄』に項目のない3伝と『延暦僧録』が建長3年の増補なのであろう[6]。
本作及び『指示抄』の宗性自筆本が東大寺に残っており、「高僧伝六種〈宗性筆/〉」として、国の重要文化財に指定されている(1952年3月29日指定)[7]。「新訂増補国史大系」巻31(1932年)はこの自筆本を底本としている[1]。また、「大日本仏教全書」巻101(1913年)にも本作と『指示抄』が収録されているが、こちらの底本は彰考館本であり、横内裕人は『国史大系書目解題』において「目次・補訂も翻刻されており、自筆本の原形とはかなり隔たるもので、利用には注意を要する」としている[8]。
内容
日本高僧伝要文抄
巻 | 伝 | 僧侶 | 素材[9] |
---|---|---|---|
巻1 | 婆羅門僧正伝 | 菩提僊那 | 逸書。『南天竺婆羅門僧正碑』『大安寺碑文』ではない |
弘法大師伝(上・下) | 空海 | 聖賢『高野大師御広伝』 | |
禅林寺僧正伝 | 宗叡 | 『日本三代実録』卒伝 | |
静観僧正伝 | 増命 | 逸書。『扶桑略記』卒伝に類似 | |
浄蔵伝 | 浄蔵 | 逸書。『延暦寺智行高僧伝』「浄蔵略伝」に類似 | |
書写上人伝 | 性空 | 花山上皇『性空上人伝』 | |
道場法師伝 | 道場 | 『日本霊異記』 | |
陽勝仙人伝 | 陽勝 | 『陽勝上人伝』 | |
巻2 | 伝教大師伝 | 最澄 | 仁忠『叡山大師伝』 |
慈覚大師伝 | 円仁 | 源英明『慈覚大師伝』 | |
智証大師伝 | 円珍 | 三善清行『智証大師伝』 | |
無動寺大師伝 | 相応 | 『天台南山無動寺建立和尚伝』 | |
尊意贈僧正伝 | 尊意 | 『尊意贈僧正伝』 | |
慈恵大僧正伝 | 良源 | 藤原斉信『慈恵大僧正伝』 | |
池上阿闍梨伝 | 皇慶 | 大江匡房『谷阿闍梨伝』 | |
巻3 | 護命僧正伝 | 護命 | 逸書 |
音石山大僧都伝 | 明詮 | 義済による伝記[10]。逸書 | |
増利僧都伝 | 増利 | 逸書 | |
延暦僧録 | 下記 | 『延暦僧録』 |
延暦僧録
巻1 | 沙門釈鑑真・沙門釈道璿・沙門釈思託・沙門釈栄叡・沙門釈普照・沙門釈隆尊 |
---|---|
巻2 | 上宮皇太子菩薩(聖徳太子)・近江天皇菩薩(天智天皇)・勝宝感神聖武皇帝(聖武天皇)・天平仁正皇后菩薩(光明皇后)・長岡天皇菩薩(桓武天皇)・感瑞応祥皇后菩薩(藤原乙牟漏)・沙門釈浄三菩薩(文室浄三) |
巻5 | 沙門釈慶俊・沙門釈戒明・感神功臣大夫居士(藤原良継)・守真居士(藤原種継)・芸亭居士(石上宅嗣)・東大居士(佐伯今毛人)・瀧淵居士(石川恒守)・淡海居士(淡海三船)・班爵居士(大中臣諸魚)・居士加古(穂積加古) |
日本高僧伝指示抄
- 弘法大師伝上
- 弘法大師伝下
- 禅林寺僧正伝
- 書写上人伝
- 静観僧正伝
- 浄蔵伝
- 陽勝仙人伝
- 伝教大師伝
- 慈覚大師伝
- 智証大師伝
- 無動寺大師伝
- 尊意贈僧正伝
- 慈恵大僧正伝
- 池上阿闍梨伝
- 音石山大僧都伝
- 増利僧都伝
「新訂増補国史大系」、「大日本仏教全書」を基に作成
脚注
参考文献
関連項目
外部リンク
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