摩擦による仕事
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/15 01:23 UTC 版)
静止摩擦は変位を伴わないため仕事を行わない。二つの摩擦面の間の界面を基準とする座標系において、動摩擦力は常に運動の逆向きにはたらいて負の仕事を与える。しかし、座標系によっては摩擦が正の仕事を行うことがある。たとえば敷物の上に箱を置き、敷物を急に引っ張ってみれば明らかである。このとき敷物を基準とすれば箱は後方に進むが、床を静止点に取った座標系では箱は前方に進む。つまり箱と敷物の間の動摩擦力は箱に運動の向きに沿った加速度を与えて正の仕事を行う。 摩擦力が行う仕事は物体の変形や摩耗、熱へと変わり、界面の性質に影響を与える(摩擦係数が変わることもある)。研磨はこのプロセスを利用している。摩擦攪拌接合のようなプロセスでは、摩擦の仕事が物質を軟化・混合させるために用いられる。機械の摺動面において、摩擦の仕事が受容できないようなレベルに達すると激しい侵食や摩耗が起きる。摺動面に微小な振動が作用したときに起きる摩耗や損傷をフレッティングという。摺動面の間に硬度の高い侵食粒子が入ると摩耗や摩擦が強められる(アブレシブ摩耗)。摩擦の仕事によって過剰な摩耗が生じると軸受の焼き付きや破壊につながる可能性がある。機械部品の表面が摩耗すると、公差を超過する隙間が生じたり、表面粗さの程度が増したりして機械が作動しなくなることもある。 動摩擦がはたらいている間、摩擦面ではアスペリティの突端ともう一方の面との間で凝着と破断が繰り返されている。破断の時に放出される熱エネルギーが微小な接触部に集中することで、閃光温度と呼ばれる瞬間的な高温が生まれる。その温度は500 - 800℃と言われ、10-4 sほど持続した後、周辺に散逸する:76。
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