摩擦のエネルギー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/15 01:23 UTC 版)
エネルギー保存則によればエネルギーが消失することはないが、注目している系から他へ移って見えなくなることはある。特に、力学系からエネルギーが失われて熱へと変化する現象は多い。摩擦はその典型である。たとえばホッケーパックが氷上を滑ると摩擦によって運動エネルギーが熱に変換され、パックと氷表面の熱エネルギーが上昇する。摩擦熱は急速に散逸するので、アリストテレスをはじめとする古代の自然哲学者はその存在に気づかず、単に運動物体は駆動力がなければエネルギーを自然に失うものと考えていた。 ある物体に力を加えながら経路 C {\displaystyle C} に沿って運ぶとき、熱に変換されるエネルギー量 E t h {\displaystyle E_{th}} は仕事の定義通りに線積分で求められる。 E t h = ∫ C F ( x ) ⋅ d x = − ∫ C μ ′ N ( x ) d s {\displaystyle E_{th}=\int _{C}\mathbf {F} (\mathbf {x} )\cdot d\mathbf {x} \ =-\int _{C}\mu ^{\prime }N(\mathbf {x} )ds} ここでそれぞれの記号は以下の意味を持つ。 F {\displaystyle \mathbf {F} } :摩擦力 x {\displaystyle \mathbf {x} } :物体の位置 μ ′ {\displaystyle \mu ^{\prime }} :動摩擦係数。表面材質の違いなどによって場所ごとに異なる可能性があるため積分の中に入れてある。 N {\displaystyle N} :垂直抗力の大きさ s {\displaystyle s} :経路に沿った移動距離 摩擦の作用によって力学系からエネルギーが失われるのは熱力学的な不可逆性の一例である。
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