摩擦の凹凸説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/15 01:23 UTC 版)
微小な凹凸を持つ摩擦面のモデル。外力 F {\displaystyle F} と荷重 W {\displaystyle W} 、接触面での垂直抗力 N {\displaystyle N} がつり合っている。 クーロンモデルが成立する機構として、凝着説とともに古くから検討されてきた候補の一つが凹凸説である。クーロンによる議論は以下のようなものである。固体表面の微小な凹凸を、のこぎり歯のような三角形の連なりとしてモデル化する。どの三角形も高さや傾斜角 θ {\displaystyle \theta } は等しいとする。上下の面の三角形が図のように噛み合った状態で横方向の力を加えて滑り運動を起こさせようとすると、接触点の一つでは、横方向の力 F {\displaystyle F} 、鉛直方向の荷重 W {\displaystyle W} 、斜面からの垂直抗力 N {\displaystyle N} がつり合う。つり合いの条件は F = N sin θ , W = N cos θ {\displaystyle F=N\sin \theta ,W=N\cos \theta } であるから、 F = W tan θ {\displaystyle F=W\tan \theta } のように、荷重に比例する横方向の力が発生することになる。この場合、摩擦係数は W {\displaystyle W} に対する F {\displaystyle F} の比として μ = F W = tan θ {\displaystyle \mu ={\frac {F}{W}}=\tan \theta } と決まり、見かけの接触面積にはよらないため、アモントン=クーロンの法則と矛盾しない。しかし、凹凸説で動摩擦を説明するには、凸部の頂点を越えて斜面を下るときに正の加速が行われることが難点となる。接触部の変形による損失を考えなければ、斜面を登るときと下るときに受ける仕事の和がゼロとなるので、正味の摩擦力が発生しないことになる。そのほか、凹凸説では表面が平坦に近いほど( θ → 0 {\displaystyle \theta \rightarrow 0} )摩擦力は小さくなるが、実際の物体では逆の振る舞いを示す場合も多い。これらのことからクーロンの凹凸説は摩擦の主要因としてはすでに否定されたと言える。:14-19:4-7:48-51
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