損傷部位と障害
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/28 07:31 UTC 版)
ヒトの脊柱は上から順に頸椎 (C1-7) 、胸椎 (Th1-12) 、腰椎 (L1-5) 、仙椎 (S1-5) 、尾椎 (1) に分けられる。損傷箇所が上に行くほど、障害レベルは高くなる。他者に障害の度合いを説明する際、「C5の完全型」「Th12の不完全型」等と表現することで、障害レベルをある程度伝えることが出来る、 仙骨以下では排泄、勃起などの機能に支障をきたし、下部胸椎から腰椎では両下肢が麻痺し、車椅子の生活を強いられる。排泄が自力では困難となることは本人のみならず家族など介護者にとっては大きな負担となる。上部胸椎では腹筋背筋が効かなくなるため体幹の保持が困難となる。さらに頸髄を高い位置で損傷すると手指だけでなく呼吸筋まで麻痺し、人工呼吸器なしには生きられなくなる(以上全て完全型の場合)。 神経診断学の知識を用いればある程度は損傷の部位を想定することができる。C3は横隔神経を支配するのでこの部位が障害されると自発呼吸ができなくなり人工呼吸器を用いなければならない。呼吸中枢は脳幹にあると考えられているので眼球頭振反射が陰性の場合は同様に危険な状態である。C5は上腕二頭筋を支配するので、これが障害されると自力で肘が曲がらなくなる。C6は手首を背屈させる、C7は手首を屈曲させ、上腕三頭筋を支配する。C8は指を曲げることに関与し、Th1は指を開いたり閉じたりする運動に関与する。それより下は運動神経ではなく感覚神経で評価する。Th4は乳首周辺の感覚に関与し、Th7は剣状突起周辺の感覚に関与する。臍部がTh10であり鼠径部がTh12である。 頸髄損傷はC6あたりで起こることが頻度としては多く、C5が麻痺していないため上腕二頭筋は収縮ができるがC7より上位の損傷の場合は麻痺しているため上腕三頭筋が収縮できず肘を自力で伸ばすことができない。
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