意思の欠缺とは? わかりやすく解説

意思の欠缺

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/06 17:12 UTC 版)

意思の欠缺(いしのけんけつ)または意思の不存在(いしのふそんざい)[注釈 1]とは、内心における真意(内心的効果意思)と表示行為が一致しない意思表示を言う。 民法においては、心裡留保(単独虚偽表示)(民法93条)、通謀虚偽表示民法94条)、錯誤民法95条)がこれにあたる。

伝統的な意思表示理論によれば、意思の欠缺については「意思表示の無効」が、瑕疵ある意思表示については「意思表示の取消し」がそれぞれ問題となる[注釈 2]

  • 民法については、以下で条数のみ記載する。

意思の欠缺の態様

心裡留保(単独虚偽表示)
自分の内心と表示が不一致であることを知りながら、真意でないことを表示すること(嘘や冗談)。この場合、表示主義的な要請が優先するため、原則として意思表示は有効である(93条本文)。
しかし、相手方が表意者の真意を知っている(悪意)か、真意を知ることができた場合(有過失)には、相手方を保護する必要がなくなるので意思主義により無効となる(93条但書)。
通謀虚偽表示
内心と表示の不一致を本人が知っているだけでなく、相手方と通じてする虚偽の意思表示をすること。この場合、意思主義的な要請が優先するので無効となる(94条1項)。
しかし、善意の第三者との関係では、取引の安全より意思主義が制限されるため、無効を対抗することができない(94条2項、権利外観理論)。
錯誤
内心と表示の不一致を本人が知らないこと。この場合も意思主義的な要請が優先され、意思表示は原則として無効となる(95条)。
ただし、表意者に重大な過失(重過失)があるような場合は、相手方を犠牲にしてまで表意者を保護する必要はないので意思主義が制限され、表意者は無効を主張できない(95条但書)。

脚注

注釈

  1. ^ 伝統的には講学上も民法の法文上も「意思の欠缺」であったが、法文上においては、2005年(平成17年)の民法現代語化の際に「意思の不存在」と変更された。
  2. ^ もっとも、現在においてはこのような区別自体が不当とされるに至っており、この用語には講学上は歴史的な意義しか持たない。

関連項目


意思の欠缺

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/07/12 00:17 UTC 版)

意思主義」の記事における「意思の欠缺」の解説

表示され効果意思対応する内心意思欠け場合を意思の欠缺という。日本民法ならったドイツ民法第一草案基本的構成では、意思欠缺する場合法律行為要素欠缺があることから法律行為無効とされる。ただし、心裡留保場合には内心意思欠缺しているが、表意者はそのこと知って意思表示行っており、意思表示対す相手方信頼保護すべきことから原則として効力妨げられないものとされている。 心裡留保意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力妨げられない民法93本文)。内心意思欠缺しているが、表意者はそのこと知って意思表示行っており、意思表示対す相手方信頼保護すべきだからである。ただし、相手方表意者の真意知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする(民法93但書)。表意者の真意知り、又は知ることができた相手方保護する要はないからである。 なお、親族法上の法律行為婚姻養子縁組など)には真にその意思なければ法的拘束力認めるべきではないか民法93条の適用はない。 虚偽表示相手方通じてした虚偽意思表示は、無効とする(民法941項)。当事者意思表示外観上の存在であることに合意しているためである。 前項規定による意思表示の無効は、善意の第三者対抗することができない民法942項)。有効な法律行為としての外観有する社会的事実対す信頼保護するためである。 錯誤意思表示は、法律行為要素錯誤があったときは、無効とする(民法95条本文)。民法95条表意保護のための規定であることから無効主張原則として錯誤者とその承継人のみに限られる。「錯誤」について従来通説意思表示内容内心意思不一致表意者が知らず、この意思の欠缺によって無効とされるとしていたが、錯誤多く内心意思成立過程瑕疵がある場合であるという批判もある。なお、ドイツ民法では錯誤法的効果無効ではなく取り消すことができるものとしている。 錯誤無効は、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効主張することができない民法95条但書)。重大な過失のあった表意者のために意思表示有効性信じた相手方第三者犠牲になることを防止するためである。

※この「意思の欠缺」の解説は、「意思主義」の解説の一部です。
「意思の欠缺」を含む「意思主義」の記事については、「意思主義」の概要を参照ください。

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