恒星進化と天体物理学への示唆
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/16 14:07 UTC 版)
「重力波の初検出」の記事における「恒星進化と天体物理学への示唆」の解説
合体前のふたつのブラックホールの質量は、恒星進化論に関する情報を与えてくれる。GW150914のもとになったふたつのブラックホールはいずれも、エックス線観測によってこれまで発見されていた恒星質量ブラックホールよりも大きな質量を持っていることが明らかになった。これは、恒星進化の最終段階において、恒星風が想定よりも弱いこと、すなわち金属量(水素・ヘリウムよりも重い元素の存在比)が太陽の半分以下であることを示唆している。 合体前のブラックホールが連星系を成していたこと、さらにこの連星系が宇宙年齢のうちに合体するほど近接した軌道を持っていたことは、連星の進化過程や恒星の運動に関しても制限を与える。恒星質量ブラックホールが超新星爆発のあとに残されることを考えると、ふたつのブラックホールが近接した軌道を持つためには、超新星爆発の瞬間にブラックホールがそれほど大きく移動しないことを示唆している。もし爆発の瞬間に大きな加速度を得てしまうと、連星系として存在できず、重力波のもとになったブラックホールの合体が発生しない。 ブラックホール合体による重力波の検出によって、こうした合体現象が1立方Gpc(ギガパーセク)あたり1回以下しか起きないという一部の理論は棄却された。GW150914の検出により、合体現象の頻度はおよそ140 Gpc−3yr−1から 17+39−13 Gpc−3yr−1と見積もられている。
※この「恒星進化と天体物理学への示唆」の解説は、「重力波の初検出」の解説の一部です。
「恒星進化と天体物理学への示唆」を含む「重力波の初検出」の記事については、「重力波の初検出」の概要を参照ください。
- 恒星進化と天体物理学への示唆のページへのリンク