対人様式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/10 09:58 UTC 版)
「境界性パーソナリティ障害」の記事における「対人様式」の解説
「理想化と脱価値化」も参照 BPD患者は、根底に他者と親密な関係を持つことへの葛藤を抱えており、そのために特有の対人様式が顕現しやすいとされる。その特有の対人様式は、対人関係を構築していく上で時に障害となることがある。 対人障害は主に二種類ある。他者を巻き込み混乱を呼ぶケース、対人恐怖・過敏性が強く、深い交流を避け回避的になるケースである。 BPDでは幼少時から分離不安のある者が多く、依存できる関係を求める傾向にある。それゆえ相手を過度に理想化する傾向があるが、傷つきやすい自己愛を持ち他者の感情には敏感であるため、なにかの拍子に失望することが多い。その際に自分が混乱しないように、自身の中にある相手の評価を下げることで防衛する。このような心理メカニズムは正常な人でも日常で用いているものであるが、そのあり方が極端になると社会的機能の低下につながり、『障害』となる。 患者にとって依存は自覚がなく無意識的なものであるが、自身の混乱や葛藤により追い払ったり引き戻したりすることで、対人関係が激しく短期的なものになりやすい。周囲の人間はこれらの行動を 『操作的(manipulative)』と否定的に受け取ることもある。 依存や混乱の著しい患者は他者を巻き込みやすく、人との摩擦が生まれやすい。しかしBPDの対人様式にまつわる特有のパーソナリティ構造は、内的表層などのパーソナリティの深い部分にあるとされており、特有の対人様式が顕現するのは、ある程度関係が深まり、その人物が患者の深い層にある感情や願望に抵触した場合である。よって、表面上は顕著な対人障害もなく社会機能が維持できている患者も多く、一見すると対人障害があるとは見受けられない場合がある。一方、対人恐怖・過敏性が強いケースでは、摩擦こそ生まれないが、他者との交流を避けることで社会的機能が低下する。 対人障害は、うつ病など他の精神疾患でもよくみられるものである。しかしBPDのこのような対人様式のあり方は、分裂や投影性同一視などの「防衛機制」の不適切な用いられ方と関与している。 周りの人間がこの症状に巻き込まれて、様々な被害を受けることが多く問題となっている。患者が健全な人との関わりを身につけること、そのトレーニングを行うことが今後の課題となっている。
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