寡占の分析
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/18 13:56 UTC 版)
寡占に関する理論では、寡占企業の行動のモデル化のためゲーム理論を多用している。 クールノー競争このモデルでは、会社は供給量を定める。クールノー競争では均衡供給量は完全競争の場合に比べて低くなる。したがって均衡価格は完全競争の場合より高くなり、消費者余剰が減少する。生産者余剰(利潤)は増加するが、消費者余剰と生産者余剰を合計した総余剰は完全競争の場合より低くなる。また、会社数が多くなれば、その分均衡価格は減少し、完全競争に近づく。会社数を無限大とする極限では、完全競争とクールノー競争の均衡点は一致する。 シュタッケルベルグ競争このモデルでは、先導企業と、先導企業から戦略的影響を受ける一方の追随企業がある。先導企業は、追随企業の行動を自分の行動を通してコントロールできるため、先導企業のほうが利潤が高い(数量競争の場合)。 ベルトラン競争このモデルでは、会社は価格を定める。クールノー競争と異なり、2社のみでの均衡点と完全競争での均衡点は一致する。つまり、価格は限界費用と等しくなる。総余剰は完全競争時と等しく、パレート最適である。インターネットでの電化製品の販売などがベルトラン競争に近い。 独占的競争この市場構造では、多数の企業が似た製品を生産して競争しているが、それぞれの製品は少しだけ差別化され違っていることから、ある程度の価格支配力(独占力)がある。よって価格がライバルより一円だけ高い場合、売り上げは減少するが、ゼロにはならない。 これは、需要の価格弾力性が有限であるという仮定と同値である。そのため、各企業は限界費用に利鞘を乗せた価格を設定できる。あるいは、限界費用×(1+1/需要の価格弾力性)=価格という関係から、価格は限界費用より高くなる。短期的には超過利潤が発生するが、この利潤は長期的には他の企業の参入によって消滅する。つまり、固定費用と粗利益が等しくなる点まで企業が参入する。 なお独占的競争は、それぞれの企業が直面する需要曲線は所与として自己の利潤最大化を図ると考えるので、企業は他企業の個別の戦略を意識して自己の戦略を決定すると考える伝統的な寡占理論の分析の枠には入らない。独占的競争はきわめて一般的な市場構造である。ホテル・洋服・靴・大学・携帯型MP3プレイヤー・音楽・本など例は無数にある。
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