寡占と競争可能性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/22 07:03 UTC 版)
初期投資が大きく他に転用ができない事業ほど埋没費用は大きくなるので、投資も新規事業への参入も慎重になる。寡占論では、埋没費用の多寡が参入障壁の高さを決める要因の一つであるとされる。 これに対しウィリアム・ボーモルは1982年に、埋没費用がゼロならば競争の潜在的可能性が高いので、たとえ独占であっても参入可能性が価格を正常に維持するというコンテスタビリティ理論(競争可能性理論)を提示し、1980年代以後のアメリカの航空輸送産業やトラック輸送産業における規制緩和の流れを作り出した。つまり、市場がどれだけ競争的または寡占的であるかは、実際に市場に参加している企業の多寡によってだけでは判断できず、潜在的な新規参入の容易さによっても左右されることが重要であると主張した。 一方で、このような独占・寡占理論とは独立した動物行動学の観点から埋没費用効果に着目したのがDawkinsとCarlisleであり、1976年に科学雑誌Natureに掲載された "Parental investment, mate desertion and a fallacy" において動物の子育てに関してのコンコルドの誤謬(Concorde fallacy)が報告された。行動経済学における埋没費用の議論は主にドーキンスらの報告に立脚するものであり、埋没費用の存在が個人の意思決定を歪ませる可能性に着目する。
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