ていでんあつ‐ダイオード【定電圧ダイオード】
読み方:ていでんあつだいおーど
ツェナーダイオード
(定電圧ダイオード から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/29 17:52 UTC 版)
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ツェナーダイオード(英語: Zener diode)はダイオードの一種。別名を定電圧ダイオードともいい、その名の通り、一定の電圧(リファレンス)を得る目的で使用される素子である。この素子の名はツェナー効果(ツェナー現象)を発見したアメリカ人クラレンス・ツェナーにちなむ。
一般的な呼称はツェナーと省略されることが多く、文献によってはジーナーダイオードの記述もみられる。
概要
通常のダイオードは、逆方向に電圧をかけても、ほとんど電流は流れないため、整流や検波などの用に供される。ところが、ある一定の電圧(逆降伏電圧[1])を上回ると、アバランシェ降伏と呼ばれる現象により、急激に電流が流れるようになる。アバランシェ降伏を起こす条件のもとで、もし外部回路で電流を制限していない場合、通常のダイオードは永久破壊に至る。
ツェナーダイオードが一般のダイオードと異なる点は、PN接合部に大量の不純物を添加し、逆電圧を与えた際の空乏層が狭くなるように設計してある点にある。空乏層が狭くなると、ある逆電圧を境にPチャネルの価電子帯からNチャネルの伝導帯へと、トンネル効果により電子が移動するツェナー効果(ツェナー降伏[1])が起きる。ツェナーダイオードはこのツェナー降伏による逆電流が流れる特徴を積極的に利用したものである。なお半導体の原子モデルでツェナー降伏は、半導体を構成する原子同士の共有結合の電子が空乏層の狭さによる強電界により外され、キャリアである自由電子と正孔の対が生起されるものとして説明される[2][3]。
このツェナー効果は、物理学者のクラレンス・ツェナーにより発見された。逆バイアスを印加されたツェナーダイオードは、制御された降伏を示し、ダイオードにかかる電圧が降伏電圧に等しくなるように電流が流れる。ここから印加電圧を上げてもダイオードでの電圧降下はあまり変わらず電流値が増大してゆく定電圧特性を示す。たとえば、ツェナー降伏電圧が3.2 Vの素子に対してそれ以上の逆バイアス電圧を印加した場合は、電圧降下が3.2 Vになる。しかし過大な逆電流は半導体素子の破壊を招くため、ツェナーダイオードを基準電圧源として使用する場合は電圧源に対し直列に抵抗を挿入し、ダイオードに流れる電流を制限して使用する。
ツェナー降伏による降伏電圧は、不純物の添加処理で極めて正確に調整することができる。このため、一般的に入手できるツェナーダイオードは種類が多く、1.2 Vから200 V程度まで販売されている。また、その誤差は、一般的なものでは5 %や10 %だが、0.05 %以内といった超高精度の商品も存在する。
アバランシェダイオードにおけるアバランシェ降伏も、これと類似している。実際の定電圧ダイオードは、同じ手法で2種類のダイオードが製造されているが、両方の降伏現象の影響を受ける。約5.6 Vまでのシリコンダイオードではツェナー降伏による影響が支配的で、負の温度係数を持つ[4][1]。5.6 V以上ではアバランシェ降伏が支配的となり、正の温度係数を持つ[4][1]。この帰結としてツェナー降伏とアバランシェ降伏との温度係数が相殺される5.6 V付近の定電圧ダイオードは素子温度にかかわらず一定の降伏電圧となり、温度による影響を極力抑えたい用途には5.6 Vのダイオードが適している。
最新の製造技術により、電圧が5.6 V未満であれば温度係数を無視できる程度の定電圧ダイオードを生産できるようになったが、電圧の高い定電圧ダイオードではどうしても温度係数が劇的に大きくなる。たとえば、75 Vのダイオードの温度係数は、12 Vのダイオードの10倍にもなる。
ツェナー降伏を利用した素子の代表例が定電圧ダイオードであったことから、しばしば定電圧ダイオード素子は降伏の種類によらず「ツェナーダイオード」の名で市場に出回っている。なお、ツェナーダイオードのもうひとつの主要な用途は、静電気やサージ電圧などの過大な入力電圧から素子や回路を保護する保護用ダイオードである[1]。
使用法
ツェナーダイオードは、電気回路に供給される電圧を安定化するためによく使われている。非安定の電圧源と並列に逆バイアスになるように接続し、その電圧が降伏電圧を超えた時にツェナー効果が起き、定電圧が維持される。

この回路では、UIN から UOUT への降下電圧が抵抗 R にかかる。R の値は次の2点を満たしていなければならない。
- D の降伏状態を維持できるだけの電流を流すために、R は充分小さくなければならない。この電流の値は、D のデータシートに記載されている。例えば、5.6 V 0.5 W のツェナーダイオードである BZX79C5V6[5] の場合は 5 mA が推奨である。電流が少なすぎると UOUT は安定せず、公称の降伏電圧よりも低くなる(定電圧放電管 (VR tube) の場合は、公称電圧よりも高く UIN に近くなる)。この図には記載されていないが、UOUT の先に接続されている外部負荷に流れる電流の変化も考慮して R を決定しなければならない。
- D を流れる電流が大きすぎて素子が破壊されないように、R は充分大きくなければならない。D を流れる電流を ID 、降伏電圧を VB 、定格電力を PMAX とすると、
- ダイオード
- アバランシェダイオード
- 定電圧放電管
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