嫌気環境
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/15 07:57 UTC 版)
記載されている嫌気性の古細菌は、偏性嫌気性が約260種、通性嫌気性が約10種となっている。なお、偏性好気性の古細菌は約270種で、記載種に関しては約半分が好気性、半分が嫌気性ということになる。嫌気性の古細菌で代表的なものはメタン菌である。約160種が記載されている。これは代謝の結果メタンを生成する微生物の総称であるが、このような代謝を行う生物は古細菌以外に知られていない。強い嫌気度を要求し、水素や酢酸などを代謝する為、それらが豊富な環境に分布する。例えば海底熱水噴出孔などでは、付近に生息する微生物によって水素が発生しており、それらを餌にメタン菌が大量に存在している。これらは同時に超好熱性も備えている。これら超好熱菌は、偏性好気性のAeropyrum、Sulfolobus、Sulfurococcus、通性嫌気性のAcidianus、Pyrolobus、Pyrobaculum aerophilumを除いて大半が偏性嫌気性であり、Methanopyrus kandleri、Methanocaldococcus jannaschii、Methanothermus fervidusなどがある。 水田や湖沼、海洋堆積物の中も微生物の働きによって酸素が消費され、水素や有機酸・アルコールなどが発生しており、それらをメタン菌が消費している。海洋ではメタノコックス綱、淡水系ではメタノバクテリウム綱やメタノミクロビウム綱が主にみられる。動物の消化器官や発酵槽などでもメタノバクテリウム綱やメタノミクロビウム綱が生息している。メタン発酵槽には好熱性のものやMethanosaetaが多い。 メタン菌はかなり広い範囲に分布しており、メタン菌そのものは極限環境微生物に含めないことが多い。ただし、増殖には酸化還元電位にして-0.33Vの非常に強い嫌気環境が必要である。メタン菌以外では、冷湧水帯堆積物や海洋堆積物に、未培養系統であるが、ANME I-IIIと呼ばれる嫌気的メタン酸化菌が存在する。この他にも、膨大な数の古細菌が海底の堆積物の中から見つかっている。2008年には、海底1m以深の沈澱物中に存在する生物の大部分を古細菌が占めるという報告がなされた。これらは殆ど培養されておらず、不明な点が多い。
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