失われた体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/22 14:44 UTC 版)
【第1巻あらすじ】君は突然ユルセルームの世界に召喚され、別人の体に押し込められた。石室に幽閉された魔法使いが、脱出を阻む呪法の対象外である異世界人の体を欲したのだ。いまや魔法使いディノンとして生きることになった君は、自分の体を乗っ取った男を追う旅に出る。 パラグラフあたりの文章は、第2巻に比してさらに長い。それまでのゲームブックのパラグラフには状況説明的な傾向があったのに対し、本作品の描写は小説並であり、またヒントとなる魔法のイメージがかもし出す強い独自性と絡んで、選択肢のひとつひとつが重みを帯びている。基本となる登場人物は主人公のほかにNPCが2名で、人数を最小限に抑えることによって、対人関係を奥深く描く余地を生んでいる。作品全体を覆う暗い雰囲気の中で、登場人物たちの掛け合いが救いとなっている。 ゲームブックにおける感情描写に挑戦しようという著者の意図に基づき、体を交換されるという状況を考慮して、主人公のディノンは男性とされている。とある女性読者は、ディノンが中性的に描かれている第2巻に対して、男性らしさが表に出ている第1巻には違和感を覚えたと述べている。こうした男女の違いは別としても、冒頭で読者自身が作品世界に引き込まれるという手法をとる本作品は、主人公の言動に対して読者が「自分ならこんなことは言わないのに」と、かえって感情移入しづらくなる可能性を帯びている。ただし全体の完成度の高さに比べれば、ごく些細な欠点に過ぎない。 シリーズ全2巻の中では、この第1巻の人気が圧倒的に高い。
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