外国人および外国の社団・財団の当事者能力
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/07 04:35 UTC 版)
「当事者能力」の記事における「外国人および外国の社団・財団の当事者能力」の解説
外国人や外国の社団・財団の当事者能力については、(訴訟能力の場合と同様に、)属人法上の民事訴訟法によるとする説(属人法説)と法廷地法(民事訴訟法28条前段および29条)によるとする説(法廷地法説)とが、裁判例および学説において対立している。 属人法説は、当事者能力も能力の一種と解し、抵触法によってこれを決する立場である。この説によれば、外国人については本国法、外国の社団・財団についてはその従属法(通説によれば設立準拠法)における民事訴訟法において当事者能力が肯定される場合には、日本においても当事者能力が肯定されることとなる。 法廷地法説は、当事者能力を手続法上の問題と捉え「手続は法廷地法による」との原則に従うものであるが、民事訴訟法28条前段の「法令」を日本の実質法に限定する見解と抵触法を含むとする見解に分かれる。前者によれば、外国人・外国法人は日本法において権利能力が認められる限りにおいて(したがって、法令・条約による制限の下で、かつ、外国法人については認許されたもののみが)民事訴訟法28条前段により当事者能力が肯定されることとなる。後者の見解は、さらに、抵触法によって選択される属人法上の当事者能力に従うという立場と、抵触法によって選択される権利能力の準拠法(外国人については本国法説と効果法説の争いがある。外国法人については従属法であり、通説によれば設立準拠法)により権利能力が認められる限り、民事訴訟法28条前段により当事者能力が肯定されることとなる。最後の見解が有力である。 もっとも、いずれの見解も民事訴訟法29条の適用を認めるため、結論に大きな違いは生じないとされる。 なお、戦前の通商航海条約においては、締約国の一方の国法に基づく商工業および金融業に関する株式会社その他の会社および組合であって当該国の版図内に住所を有するものは、他方の版図内において、その国法に違反しない限り、権利を行使し、かつ、原告または被告として裁判所に出頭することができる旨の規定(いわゆる会社互認規定)がみられる(日瑞通商航海条約8条1項、日本瑞西間居住通商条約13条、日蘭通商航海条約9条、日西修好交通条約8条など)。これを外国法人の認許と解する見解もあるが、多数説は、これを否定し、訴訟当事者能力を認めたものに過ぎないとする。
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