噴水庭園
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/24 02:43 UTC 版)
宮殿の建設よりも労力を費やされている噴水庭園には、宮殿建設の25,000人に対し、36,000人が投入されている。そして、その噴水にはルイ14世の三つの意図が込められている。 「水なき地に水を引く」 ヴェルサイユには近くに水を引く高地が無い。ルイ14世は10km離れたセーヌ川の川岸にマルリーの機械と呼ばれる巨大な揚水装置を設置し、堤の上に水を上げさせた。そして古代ローマに倣って水道橋を作って、水をヴェルサイユまで運び、巨大な貯水槽に溜め込んだ。こうして水無き地で常に水を噴き上げる噴水庭園を完成させ、自然をも変える力を周囲に示した。 「貴族を従わせる」 ルイ14世は10歳の時にフロンドの乱で、貴族たちに命を脅かされたことがある。ルイ14世はこの体験を一生忘れず、彼は貴族をヴェルサイユに強制移住させた。「ラトナの噴水」は、ギリシャ神話に登場するラトナ(レートー)が村人に泥を投げつけられながらも、息子の太陽神アポロンを守っている銅像と、その足元にある蛙やトカゲは神の怒りに触れて村人たちが変えられた像を、模った噴水である。ラトナとアポロンはフロンドの乱の時、彼を守ってくれた母と幼いルイ14世自身を示し、蛙やトカゲに変えられた村人は貴族たちをあらわしている。王に反抗をする者は許さないという宣言を示している。 「太陽神アポロンの噴水」は、アポロンは天馬に引かれて海中から姿をあらわし、天に駆け上ろうとしているものを模った噴水である。アポロンはルイ14世自身をあらわし、彼が天空から地上の全てを従わせると示している。 「民衆の心をつかむ」 ルイ14世は民衆の誰もがヴェルサイユに入るのを許し、民衆に庭園の見方を教える「王の庭園鑑賞法」というガイドブックを発行した。それには「ラトナの噴水の手前で一休みして、ラトナ、周りにある彫刻をみよ。王の散歩道、アポロンの噴水、その向こうの運河を見渡そう」と書かれている。民衆は、ガイドブックに従って庭園を鑑賞することで、貴族と自然を圧倒した王の偉大さを刷り込まれていった。夏、ヴェルサイユでは毎晩のように祭典が催され、訪れた民衆はバレーや舞劇に酔いしれた。 噴水庭園は、遠近法を用いて修景され、宮殿からラトナの泉、タピスヴェール(Tapis Vert、緑の絨毯)に沿って、アポロの戦車の盆地へと続いている。水面から昇る戦車は、太陽の昇りを象徴した。シャルル・ルブランが設計し、1668年から1670年の間に彫刻家ジャン=バティスト・テュビ(英語版)が王立ゴブラン製作所(英語版)で製作したもので、鉛で鋳造された後に金メッキが施されている。噴水の向こうには、大運河(Grand Canal, グランド・カナール)が公園の南端まで1800メートル伸びている。
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