台湾・中国南部
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/14 15:47 UTC 版)
台湾原住民のタイヤル族、サイシャット族、ツォウ族、ブヌン族、ルカイ族、パイワン族、アミ族、パゼッヘ族などの神話では、異なる洪水伝説が記録されている。 太平洋戦争中に台湾原住民の伝統音楽のフィールド調査をした日本人音楽学者黒澤隆朝は、アミ族の始祖伝説として以下の様な話を採録している。「太古、南方にあったラガサンという大陸が天変地異で海中に沈んだ。そのとき臼に載って辛くも逃れだした男女が海流に乗って北上し、台湾にたどり着いた。二人はその地に落ち着いて結婚し、子孫も増えた。そして『我々は北にやってきた』ことを記念し、北を意味する「アミ」を民族名とした。」別の伝説では「ラガサン」は二人がもともと住んでいた土地の名ではなく、台湾に漂着したとき最初にたどり着いた山の名であるともいう。 またアミ族の神話では、洪水を逃れたこの男女とは兄妹であったともされる。結婚して最初に生まれた子供は蛇やカエルなどの姿であり、これを見た太陽や月の神がしかるべき交わり方を教えると、ようやく人間の男の子や女の子が生まれたという筋になっている。同じような大洪水神話は中国の西南地方に住む苗族、彝族、ヤオ族などをはじめ、中国南部から東南アジア、太平洋にまで見られる。これらの神話では、兄妹だけが大洪水から生き残り、樹木や山など高い物の周りを回ったあとに近親婚をして子供をもうけるものの、最初の子供は肉塊や動物であり、天や神から正しい交わり方を教えられて初めて人間の子供ができる、という共通する筋があり、日本神話のイザナギ・イザナミ神話との関連性もみられる。生き残った兄妹による近親婚を部族起源とする類型は後述の中央アフリカ・マンジャ族にもみられる。
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