効果のないPKCδ阻害剤
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/31 05:40 UTC 版)
「ロットレリン」の記事における「効果のないPKCδ阻害剤」の解説
ロットレリンはプロテインキナーゼC (PKC) δの阻害剤として報告された(その他のPKCアイソザイムに対して5から13倍の選択性を示すと報告された)。PKCδは、虚血再灌流障害後の心機能の低下や細胞死、血管平滑筋収縮の促進および灌流の減少と関連している。しかしながら、PKCδ特異的阻害剤としてのロットレリンの役割は疑問が呈されている。In vitroでの研究に基づきPKCδ選択的阻害剤としてロットレリンを使用している研究例はあるが、一部の研究ではロットレリンはPKCδの活性を妨害せず、その他のキナーゼや非キナーゼタンパク質をin vitroにおいて妨害することが示されている。ロットレリンはまた、高用量においてミトコンドリアを脱共役させ、その結果ミトコンドリア膜電位の脱分極が起こる。ロットレリンは、ATPレベルを低下させ、5'-AMP活性化プロテインキナーゼを活性化し、活性酸素種 (ROS) のミトコンドリア生産に影響を与えることが明らかにされている。結果に影響し得るPKCδ非依存的な生物学的、生化学的過程が存在するため、ロットレリンがPKCδの選択的阻害剤であるとはとても言えない。なぜロットレリンがPKCδを阻害するのかについては、ロットレリンがATPレベルを減少させ、PKCδに存在するチロシンのリン酸化および活性化を妨害するという機構が提唱されている。 1994年の論文で使用されたrottlerinには不純物が含まれており、PKCδに対する阻害はこの不純物によるものであることがLC Laboratoriesの実験によって示唆されている。このためLC Laboratoriesはロットレリンの販売を停止した。
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