前立腺癌治療に対するHIFU
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/11 21:20 UTC 版)
「高密度焦点式超音波治療法」の記事における「前立腺癌治療に対するHIFU」の解説
国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」において、前立腺癌は2017年の男性癌罹患者数(1年間に診断される癌患者数)で第1位になったことが報告された。そのうち約90%が転移のない、いわゆる“限局性前立腺癌”とされる。限局性前立腺癌の標準治療は、前立腺全体を治療範囲とする外科的手術と放射線治療である。しかし、前立腺全体を治療範囲とすると治療後の尿失禁や性機能障害が生じやすい。 前立腺癌に対するHIFUは、尿失禁や性機能障害を抑えた治療法として期待され、当初は前立腺全体に対して施行されたが、最近では、癌の場所と、その限られた周囲組織を局所的に治療する“がん標的局所療法 (focal therapy)”として応用されている。 国内におけるHIFUをもちいた“前立腺がん標的局所療法 (focal therapy)”の治療成績 国内で実施されたHIFUをもちいた“前立腺がん標的局所療法 (focal therapy)”は、血清PSA値が20ng/mL以下で、MRI-TRUS融合画像ガイド下生検により癌局在診断が行われた症例のうち、両葉にGS7以上のsignificant cancerを有する症例を除いた症例を対象に実施された。最低12ヶ月間以上経過観察した90例の臨床成績では、年齢中央値70歳、血清PSA中央値7.26ng/mL、前立腺体積中央値24cc、リスク群別患者数 低リスク群31例、中リスク群44例、高リスク群15例に対して治療を実施し、手術時間は40分間で、全例の尿道カテーテルは術後24時間以内に抜去された。治療後1カ月目に血清PSA値は中央値1.59ng/mLまで低下し、術後6-12ヶ月に実施された生検陰性率は91%、経過観察期間中央値21カ月間(12-42カ月間)で生化学的非再発生存率は92%であった。IPSS、IPSS QOL、OABSS、EPIC urinary domain、最大尿流率、IIEF-5は、治療3カ月以降は治療前と同等であった。合併症として、尿路感染症が4.4%、尿道狭窄症が3.3%の症例に認められたが、尿失禁は認められず、治療前に勃起が認められた症例における、勃起温存率86%、射精温存率70%であった。このような限局性前立腺癌に対するHIFUをもちいたFocal therapyの短期成績は、長期成績を期待させるものと考えられた。現在、同治療は特定臨床研究として実施されており、多症例の長期成績が集積されている。
※この「前立腺癌治療に対するHIFU」の解説は、「高密度焦点式超音波治療法」の解説の一部です。
「前立腺癌治療に対するHIFU」を含む「高密度焦点式超音波治療法」の記事については、「高密度焦点式超音波治療法」の概要を参照ください。
- 前立腺癌治療に対するHIFUのページへのリンク