前立腺全摘除術
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/21 04:00 UTC 版)
PSA検査で前立腺癌の早期発見が可能となっているため、前立腺癌が前立腺内に留まっている場合は根治を目指して前立腺全摘除術を行う事で癌を全て取り除く事が可能となっている。手術で切除するのは前立腺、精嚢、精管の一部、膀胱頸部の一部などで、それらに関連したリンパ節(所属リンパ節)も対象となる(リンパ節郭清)。しかし、リンパ節郭清に関しては、所属リンパ節をすべて切除するのではなく、閉鎖リンパ節だけ郭清するという術式が採用されることもある。 前立腺全摘除術には恥骨後式、会陰式の2つがあるが、恥骨後式が最も一般的に行われている。 恥骨後式 全身麻酔と硬膜外麻酔を併用する。硬膜外麻酔を使用するのは術後の痛みを緩和する効果があるためで、下腹部を縦に切開して手術する。前立腺摘出後、尿道に管(カテーテル)を留置したまま切開した手術創を閉じる。 会陰式 陰嚢の裏側と肛門の間の部分を切開し、前立腺と直腸の間をはがして前立腺を摘出する。 これらの手術は共通して約3時間から4時間ほどで終わり、その後10日から2週間ほどの入院になる。術後1週間ほどで尿道カテーテルが抜かれる。ただしこの手術で起こりやすい合併症として尿漏れと性機能不全がある。尿漏れについては、術後はこの症状に悩まされやすいため看護師のケアや指導により自分で対処できるようになってから退院する例が多い。退院後は骨盤底筋体操を毎日行う習慣づけをして尿漏れを防ぐようにすれば、平均して1か月ほどで、長くても1年ほどで尿漏れは改善される。また、前立腺床を刺激しないように1か月は自転車や乗馬などは避ける注意が必要である。 前立腺全摘除術の適用範囲は、限局癌(癌が前立腺内に留まっている。すなわち早期発見された場合)である事、期待余命が10年以上である事、低リスクである事(PSA10ng/mlまで、グリソンスコア6以下、T1かT2a、この3項目を全て満たす場合)、中リスクである事(PSA20ng/mlまで、グリソンスコア7以下、T2b以下である場合)である。 前立腺全摘除術は簡単なように言われているが、前立腺は身体の深部にあり周囲を様々な臓器に囲まれているため、また前立腺の前面には静脈が密集している部分があるため、開腹による前立腺全摘除術は大量の出血を起こしやすい難しい手術である。このため、事前に自らの血液を採血して保存しておき、自己輸血できるようにする場合もある。大体の場合、1週間から10日間隔で2回から3回、400mlずつ採血して保存する。
※この「前立腺全摘除術」の解説は、「前立腺癌」の解説の一部です。
「前立腺全摘除術」を含む「前立腺癌」の記事については、「前立腺癌」の概要を参照ください。
- 前立腺全摘除術のページへのリンク