腹腔鏡下(内視鏡)前立腺全摘除術
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/21 04:00 UTC 版)
「前立腺癌」の記事における「腹腔鏡下(内視鏡)前立腺全摘除術」の解説
腹腔鏡下(内視鏡)前立腺全摘除術とは腹腔鏡という内視鏡(カメラ)を使って行う手術である。腹腔鏡(内視鏡)を患者の体内に挿入するため、腹部に5mmから12mmの穴を複数個(通常は5個)開け、ここから内視鏡や手術器具を挿入する。また、手術する空間を確保するため、腹部に二酸化炭素を送り込んで膨らませる気腹を行う。実際の作業はカメラの画像をモニターで見ながら行い、患部をよく観察しながら体外から手術器具を操作して前立腺や精嚢を摘出する。 腹腔鏡下(内視鏡)前立腺全摘除術のメリット 内視鏡前立腺全摘除術のメリットとして、開腹手術と較べて手術創が小さいために痛みも出血も少なく、術者の目となる内視鏡が腹部に入るために奥まって見えにくいところもよく見え、同時にモニターで拡大しているため、開腹による全摘除術より細かい部分もよく見える(前立腺は恥骨の裏側にあり、骨盤の奥に位置するためこれが大きなメリットといえる)。手術後は尿道にカテーテルを留置するが、3日ほどで抜く事ができるので通常5日から1週間程度と退院できるまでの期間が開腹手術より早く、仕事が忙しくて長期間の入院ができない場合にメリットがある。 腹腔鏡下(内視鏡)前立腺全摘除術のデメリット 狭い範囲で臓器の摘出や縫合作業を行うために、手術時間は通常3時間から6時間と開腹手術より長く、その分患者に負担がかかる事になる。また手術を行う医師にも熟練した経験と技術が不可欠となる。また、開腹手術は腹腔を開かずに行うが、腹腔鏡下(内視鏡)前立腺全摘除術では腹腔に穴を開けるため、術後に稀であるが腸の癒着が起こるリスクもある。また、熟練した医師の手技が求められるので、保険の対象とするには、この手術の経験が10例以上あるなどの、厳しい基準を満たした認定病院で手術を受ける必要がある。過去には施術に失敗し、出血多量で死亡する事案も発生している(慈恵医大青戸病院事件)。 なお、腹腔鏡下(内視鏡)前立腺全摘除術は、2006年4月に健康保険の適用が認められている。 前立腺全摘除術と腹腔鏡下(内視鏡)前立腺全摘除術の変わらない点 腹腔鏡下(内視鏡)前立腺全摘除術の適用範囲は前立腺全摘除術とほとんど同じである(中リスクである場合のみ適用から外れる)。治療成績は通常の恥骨後式、会陰式手術と変わらない。
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