前払い賃金と問題点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/20 16:27 UTC 版)
「バーレーンの真珠採取業」の記事における「前払い賃金と問題点」の解説
こうした作業に従事していた潜水夫たちは、古くは非常に厳しい境遇に置かれていた。彼らは商人たちから賃金を前払いされるのが慣例となっていたが、この前払い賃金は実質的に高利を伴う借金であって、採取時期以外にも商人や船長たちのもとで不払い労働に従事させられる原因になった。また、潜水夫が死んだ時点で借金が残っていると、息子が潜水夫になって返済しなければならなかった。こうしたシステムは、前述のようにイブン・バットゥータの時代にもそれらしい記述が見られるものの、はっきりと確立したのは、地元のエリート層によって真珠採取が組織化されるようになった17世紀以降のことである。 これを改善したのがバーレーンの首長ハマド(英語版)であった。かれは1920年代から大改革に着手し、前払い制は残しつつもその額の上限や利率を国が毎年公示すること、潜水夫には「潜水夫手帳」を支給して貸借額を厳格に管理すること、死亡時に残った借金は子供に引き継がせずに消滅させること、採取時期以外の不払い労働を禁止することなどを定めた。これには既得権益を守ろうとした商人らから反発が生まれたのはもちろんだが、船長や商人から虚偽を吹き込まれた潜水夫たちも反対に回り、しばしば大きな暴動が起こった。しかし、1932年までにはこうした動きはおさまり、断行された改革への反対は出なくなった。 この改革を経て、バーレーンでは「潜水会議」という真珠採取業に関わる国の会議が発足し、真珠採取業に関する諸事項が取り決められるようになった。
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